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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(24)諸刃の剣:放射線

 X線撮影(いわゆるレントゲン)による身体の内部映像やX線CT(断層撮影)による臓器の断面撮影などが、疾病の発見・診断に役立っているのはご存知であろう。2本のγガンマ線を互いに正確に180度の方向に出す放射性フッ素・フッ素18化合物をがん細胞に結合させて、体内のがん細胞の詳細な位置を見つけるPET検査をはじめ、医療の診断分野での放射能の応用は多岐にわたっている。
 治療面でも、加速した陽子(放射線の一種)をがん細胞に集中的に照射して死滅させる方法が普及しつつある。加速粒子の照射方法に工夫があり、周辺の健康な細胞への影響は極力抑制されるようになっている。
 さらに、健康な細胞にほとんど影響のない低速中性子を、がん細胞に結合させたホウ素同位体・ホウ素10化合物に照射し、核反応でできる短飛程で高速のαアルファ線とリチウム7原子核の放射線効果で、がん細胞だけを死滅させる方法が、国立がん研究センターなどに設置され始めている。
 ほかにも、半減期の長い核種を用いた考古学的な年代決定や、地質学、産業界での有用例も多い。
 しかし、科学技術には「諸刃の剣」の要素がある。とくに核関連技術はその功罪の差が大きい。核兵器や原子炉の実用などは重大な倫理的課題でもあり、狭い専門知識だけでなく深い見識と道義性が同時に問われる。
 本豆知識がその判断に僅かでも役立つことを願いこの連載を終えよう。