被爆者相談所および法人事務所
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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(17)水素爆弾

 超高温・高圧の太陽内部で、4個の「水素1」原子核が融合して1個の「ヘリウム4」原子核になる ―― この核融合が太陽のエネルギー源だと考えられている。これと同等の核融合反応は人工的に実現されてはいないが、類似の反応で、重水素(水素2)原子核と三重水素(水素3)原子核を核融合させ、短時間だがそれに近いエネルギー発生技術を人類は達成した。これが核融合兵器(水素爆弾)だ。反応を継続・制御できれば核融合炉になるが、今はまだ技術的困難から実現できていない。
 核融合させるには、原子核を取り巻く電子を取り除き裸の原子核どうしが融合する環境を作らねばならない。そのための莫大なエネルギーはウランやプルトニウムの核分裂で供給できるが、多量の重水素・三重水素の核融合が完成する時間を保つためには、極めて高度な技術を要する。
 核融合を主体とする水爆は、原爆の数百から千倍以上の破壊力が得られる。この水爆を劣化ウラン金属などで囲めば、大量の高速中性子で劣化ウランも核分裂して多くの放射性物質(死の灰)を生じ、爆発以外の殺傷力も大きくなる。Fission(分裂)でFusion(融合)させ、さらにFissionさせるので「3F核爆弾」と呼ばれるが、大量の放射性物質を発生させるため「汚い水爆」とも呼ばれる。
 第五福竜丸その他の漁船、ビキニ住民などが甚大な被曝の影響を受けたのはご存知の通りである。