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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(22)遺伝子と放射線

 人間を含め生物のからだは細胞でできている。細胞の中には、その細胞自身の構造や働きを示した「設計図」として遺伝子が存在する。この遺伝子の実体はDNAである。
 DNAは、長い鎖状の分子が2本向き合って各所でつながり、縄梯子がらせん状にねじれた形をしている。1本の連続した縦縄の各所には、もう1本の長い縦縄とつながる多くの短い横縄となる物質がある。これは縦縄とは異なる性質の4種類の特定の塩基対で、この4種の塩基対の多様な順序や配列が、細胞作成の設計図の「遺伝子情報」となっている。
 放射線は、遺伝子情報の元であるDNAに衝突して縦縄を切断したり、横縄の塩基対配列を部分的に切断・破壊することがある。その傷が浅ければ、周囲の環境を参考にして本来の遺伝子情報が修復されるのだが、再生不可能、あるいは似て非なる不完全修復が起こる場合もある。再生不可能な場合は、その遺伝子情報は捨てられるので、むしろ無害であるが、不完全修復の場合は、既存の細胞に似て非なる病的な細胞を作る「設計図」になってしまい、これががん発生の確率上昇につながる。
 放射線は、直接DNAに当たる場合だけでなく、細胞内の水分子にエネルギーを与えてフリーラジカルと呼ばれる過激な反応をする化学種を生成する。これがDNAの塩基対配列(遺伝子情報)を破壊することでも、同様にがんの原因となりうる。