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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(8)現代人の放射能汚染

 地球の誕生から約46億年。当初共存した多量かつ多様な短・中寿命の放射性核種は消滅し、極端に長寿命の放射性核種による自然放射能の温和な環境で人類は誕生・成長した。
 ところが1930年代末に核分裂現象が発見されてから、原子爆弾の開発・投下という軍事利用で実用化され、以後は水爆などの核兵器の大気圏内実験が急増。人工の放射性核種による汚染は、20世紀後半以降の土壌のストロンチウム90やセシウム137の増加量を見れば一目瞭然だ。
 さすがに地下核実験への移行などの自粛気運がおこり、毎月毎平米当り地表で数百ベクレルだった値が21世紀初頭には激減したが、今でも観測可能レベルで残っている。
 一方で核分裂の平和利用として、核兵器開発国の先導で原子炉が新エネルギー源として普及した。しかし、チェルノブイリやフクシマの事故では大気中に放射性核分裂生成物が放出され地表汚染も増加した。
 放射性核分裂生成物は、地下核実験では地殻内に暫くは閉じ込められ、原子炉は、事故さえなければ原子炉施設内や地下に保管されるが、地球全体としてみれば放射性核種の量が増加していることに変わりはない。
 20世紀前半までは存在しなかった大量の放射性核種を、廃棄物として人類が増やし続けている。この増大するばかりの人工の放射能汚染を、私たちは未来社会や自然への責任と倫理観として考えなければなるまい。