被爆者相談所および法人事務所
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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(19)中性子による誘導放射能

 核兵器は、爆発にともなって多量の中性子を放出する。この中性子が、環境中にある非放射性の元素の核種に吸収されると、新しい放射性核種が生じる。これを誘導放射性核種という。多くの場合、半減期があまり長くない半面、崩壊の強さ(ベクレル)は大きい場合があるので、原爆の影響には誘導放射能による被曝効果を考慮する必要がある。
 ヒロシマ・ナガサキでは、ナトリウム、リン、カリウム、カルシウムなど、人間や動植物のからだ、食品に含まれる元素にも、中性子を受けて多かれ少なかれ誘導放射性核種が生成された。例えば、中性子を吸収した通常の非放射性ナトリウムから放射性ナトリウム-24(半減期15時間)などの新しい放射性核種ができ、核分裂で生じた高速の中性子によって生ずる放射線効果や、放射性核種の効果とともに、人びとの放射線被曝量を増加させた。
 一般に、半減期の長い誘導放射性核種の生成量は少ないが、半減期の短いものの生成量は多い。その影響は日ごとに減衰するとはいえ、被爆直後に人が摂取した食べ物にも多くの種類の誘導放射性核種が含まれていた可能性を否定できず、相応の内部被曝があったと考えられる。
 「黒い雨」の中にも、核分裂生成物とともに、上記の誘導放射性核種も含まれていて、外部被曝や内部被曝の影響をより多様・複雑にした恐れを否定できない。