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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(5)ベクレルとシーベルト

 新聞やテレビには、放射能の量や放射線の影響量を表現する用語がしばしば登場する。前者が「ベクレル」、後者が「シーベルト」だ。
 放射性核種が崩壊して、αアルファ線、βベータ線、γガンマ線などの放射線を出す能力を「放射能」といい、その大小はベクレル(Bq)という単位で定義される。これは、放出される放射線の種類やエネルギー量とは関係なく、1秒間に原子核が崩壊する個数(個数/秒)であり、放射線を出す側の放出粒子(放射線)の単位である。
 つまり、放射能の大小を表すのは、崩壊の頻度のみである。放射性核種が毎秒10回の崩壊をすれば、放出される放射線の種類がαアルファ線、βベータ線、γガンマ線のどれであっても10ベクレルである。
 一方、放射線を受けた(被曝した)人間のからだなど生体物質への影響量は、放射線の個数だけでは計れない。放射線の種類やエネルギー、外部被曝か内部被曝か、さらには被曝した臓器の種類などでも、放射線による生物学的影響は異なり、ベクレルだけでは評価できないからだ。
 そこで、ベクレルの値に基づき、放射線の種類や性質、被曝の諸条件を考慮した生物学的被曝線量の評価が国際的におこなわれており、シーベルト(Sv)という放射線を受けた側の影響評価の単位で表現される。なお毎時の線量の割合(線量率)はシーベルト/時間(Sv/h)で表わす。
 ベクレルとシーベルトの関連と違いによく留意してほしい。