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【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏

(7)20億年前の天然原子炉

 日本で使われている原子炉は、水を「中性子減速剤」とする沸騰水型や加圧水型と呼ばれるものである。ウラン235が中性子を吸収しウラン236になると、高確率で核分裂して多大なエネルギーと複数個の高速中性子を放出する。高速中性子が他のウラン235への衝突・吸収をくり返せば、核分裂が連鎖的に起こり、膨大なエネルギーを発生させる。
 この核分裂連鎖反応を爆発的に起こすのではなく、人が調整しながら起こす装置が原子炉だ。ポイントは高速中性子を減速させるところにあり、そのため中性子に近い質量をもつ水の水素原子核が最適の減速材になる。止まらず、進み過ぎず、核分裂連鎖反応を制御する理屈である。減速材の水は核分裂のエネルギーで加熱され、沸騰し、火力発電と同様に水蒸気で発電用タービンを回して電気を作る。これが原子力発電だ。
 現在の天然ウランは、ウラン238が99.3%、ウラン235は0.7%しかないので、約3%に濃縮したウラン235が核燃料として用いられる。
 ところが約20億年前の地球には、ウラン235が3%以上の濃度で存在した。そこに水が存在すれば天然の原子炉ができる可能性を、1956年に黒田和夫博士が予言した。1972年アフリカのガボン共和国オクロ鉱山湖畔で度重なる核分裂の痕跡が発見され、「天然原子炉」の存在が証明された。無制御ながらウラン鉱床と湖水による自然のなせるわざだ。