【連載】知っておきたい放射線の豆知識 放射化学者 佐野博敏
(15)内部被曝
外部被曝の影響は、体外から放射線を受けたときに限られるが、内部被曝では取り込まれた放射性物質が体内にある限り影響が続く。
α線は飛距離が短く透過力も弱く外部被曝での防護は容易だが、電離作用が強力なため、一度体内に入ると周辺細胞への影響は極めて大きい。
β線の外部被曝は皮膚表面近くで吸収されるため、主に皮膚への被曝として取り扱われるが、内部被曝では周辺臓器への影響が無視できない。
γ線は電離作用は小さいが透過力が高く、外部被曝でも体内の深い部分に影響を与えうる。内部被曝でも影響を与える範囲は広くなる。
体内に入った放射性核種の減衰には、(1)核種(元素)の物理学的な半減期と、(2)その核種が代謝によって体外に排出される生物学的半減期の2つが関係する。加えて、特定の核種が特定の臓器に集中的に取り込まれるケースを考慮しなければならない。
例えば、ヨウ素131の物理学的半減期は8日、生物学的半減期は80日、両者を考慮した実効半減期は7日程度だが、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料なので甲状腺に集まり、そこでの影響が大きい。体内に入ったストロンチウム90の約70%は全身に広がるが100日でほぼ排出される。だが約30%は骨に集まり固定されるため生物学的半減期が非常に長くなり影響が長期化する。内部被曝は複雑なので国際放射線防護委員会の勧告でも細かく改訂されている。