被爆者相談所および法人事務所
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【連載】 現場から見る東友会相談所の40年
相談員 村田未知子

最終回 多くの人びとに支えられて

原爆症認定訴訟の終結

 集団訴訟は2009年8月に日本被団協と内閣総理大臣・自民党総裁の「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」をもって一応終結。しかし、厚労省が審査を保留していたため訴訟に参加できなかった被爆者が9人残されました。そのため東友会はノーモア・ヒバクシャ訴訟に参加。東京訴訟は32人(全国120人)の原告全員を原爆症と認定させるという快挙をあげました。
 原爆症認定申請の件数だけをみても、私が40年間の相談活動の中で対応した原爆症認定申請の総件数は1100件を超えます。

東京都との信頼関係

 1962年度から60年間にわたる「被爆者健康指導事業」の業務委託で培った東京都との信頼関係は、特筆すべきものです。
 東友会は、いわゆる「圧力団体」になりがちです。しかし、要求をごり押しするのではなく、いまある制度を徹底活用しながら、問題点は運動で制度を変えていくという姿勢を貫いてきた先人たちに、私は感銘を受けてきました。東京都の職員に無理難題を言う被爆者に、被爆者団体の立場でいさめたこともありました。
 信頼関係が深まり、1994年から東京都は、被爆者や被爆二世の書類に同封して、東友会の案内などを送ってくれるようになり、1998年からは東京都の担当部長も参加した懇談会が毎年開かれています。
 都の窓口である被爆者援護担当の職員の対応は、文字通り「援護」の姿勢だと東友会は感じています。医師でもある担当の部長や課長は、温かい態度で被爆者に接し、診断書の作成などで被爆者の主治医を指導してくれることもたびたびありました。

支援のみなさんの力を得て

 東友会と地区の会は、結成当時から、東京民医連に参加する医療機関から多大な支援を受けてきました。申請に必要な診断書の作成にとどまらず、入院や介護の世話、生活の支援まで受けた被爆者が少なくありません。
 とりわけ「被爆者専門外来」を設けていた代々木病院の支えは大きなものでした。1985年には大田病院が被爆者集団健診を開始し、当時24%だった大田区の健康管理手当の受給率が、5年後には東京都の平均を上回る40%に。集団健診のあとの懇談会で、一人の被爆者が立ち上がり深々と頭を下げて「ありがとうございました。きょうは心の中まで診てもらいました」と言ったのは忘れられません。
 原水協からも大きな支援がありました。大田病院の集団健診でも、被爆者全員に送る案内はがきの郵送料5万円を寄付したのは大田原水協でした。年末の都内全域での被爆者お見舞い訪問は毎年続き、57回目となった2021年を加えると、見舞金を贈られた被爆者は累計1万1414人、見舞金の総額は3472万6000円になりました。
 1984年の年頭、港区の独り暮らしの被爆者から電話がありました。いつも不安や不満の訴えを続ける人でした。「またか」と構えると、「暮れに見舞金をいただいたんですが…」とのこと。原水協の被爆者援護連帯6・9行動のことを知らせると、「私たちは忘れられていなかったのですね」。初めて聞いた、その被爆者の明るい声でした。この見舞金とともに、1988年からは毎年、東都生協のみなさんから手編みの編み物が届けられ、この枚数も1万枚を超えています。

都民のネットワークで

 一般社団法人東友会には今、理事として医師や弁護士など被爆者以外の人が加わり、組織を維持しています。 被爆者の平均年齢が80歳代後半に近づき、相談事業とともに追悼事業、実相普及が重要になっています。私も、被爆者の二大要求「核兵器廃絶」と「原爆被害への国家補償」の実現をめざし続けたいと思います。

1982年度は村田相談員が相談員になった最初の年
2021年度は記事掲載時点で最新の相談件数
以下は、読み上げ用にグラフを表にしたものです。
東友会相談所への相談件数 5年ごとの推移
年度 相談件数 備考
1980 2007
1982 2282 村田相談員が相談員になった最初の年
1985 4474
1990 7630
1995 11460
2000 13593
2005 11291
2010 17730
2015 16774
2020 14179
2021 11694 記事掲載時点で最新の相談件数
事務所の部屋の半分以上が写っている写真。壁に沿って天井まで届く棚がぎっしり並べられている。棚を書類や本などが埋めている。事務机が6台接して並べられ、机の間にはアクリル製の仕切が立てられている。5人事務局員たちが、それぞれの机で作業したり、電話を受けたりしている。机の上も書類などがたくさん立てられている。
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