被爆者相談所および法人事務所
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【連載】 現場から見る東友会相談所の40年
相談員 村田未知子

第4回 とにかく被爆者のなかに

 「年度が替わると地区の会の総会があるけど、一緒に来てくれない。手当のことか制度について聞かれたら自信がないんですよ。間違ったら事務局長として恥ずかしいでしょ」。東友会に勤めた翌年、田川時彦事務局長からの依頼でした。「喜んで」と私は同行しました。
 それは、東友会の基礎である地区の会の総会を見せよう、一人でも多くの被爆者に会わせようという事務局長の「教育方針」だったことに、気がつきました。
 総会はほとんど休日。1日に3カ所くらい回ったこともありました。そんなとき事務局長は、自腹を切ってタクシーを使いました。
 高齢者や中年の参加者が多い地区の会の総会では、30歳代というだけで、私は歓迎されました。翌日から「あの場では聞きにくくて」という電話が必ず寄せられました。
 信頼関係をつくるには、顔をあわせて声を掛け合うこと、相談事業も、直接に会うことが大切なのだと気づくことができました。

生きる視点も被爆者から

 60年を超える東友会の歴史のなかで、被爆者が事務所に勤務したことはありません。当時の役員はほとんどが現職。若い人でも20歳くらい年上の50代前半。そんな働き盛りの役員や被爆者から、日に何本も指示が飛び交います。しかし、受けるのは一人の事務局員。つまり、一般の企業などとは逆、逆三角形の構造なのです。そんななかで、一人で事務所を預かることはたいへんな負担でした。
 事務局長との連絡は、毎晩9時過ぎの電話でした。そこで事務局長はいつも視点を示してくれました。そのなかで、30年が過ぎた今でも忘れられないことばがあります。

  • まず聞くこと。それが最初の仕事。とにかく聞いて、それから急がなければいけないか、ゆっくり進めてていいかを判断。
  • 相談員が中心になって解決しないで、一緒に何ができるかを考える。だまって隣りに座っていることだって大切。
  • 人間、誰一人同じ人なんていないように、解決の方法はひとつだけではない。
  • 苦しい悲しい辛いだけで人は生きられない。

 知ったかぶりをして不十分な対応をしたとき、対応に少し慣れてきて画一的になっていたとき、同情しすぎて、相談員の立場を逸脱しそうなとき、相手の意志を確かめずに解決方法を押しつけようとしていたとき、解決の方向が見えなく悩んでいたとき……。相談事業だけでなく、生きる視点を学ぶことができたと思っています。

長方形に並べられた机に着席する参加者たち。一人は立ってマイクを使い話している。
地区の会を訪ね、顔を合わせた相談活動を。写真は1999年5月東久留米の会(当時)。