被爆者相談所および法人事務所
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「年末見舞い金を贈るつどい」と訪問行動 年1回でも会って話す大切さ

 2015年12月13日、「被爆者に年末お見舞金を贈るつどい」が開かれました。東京原水協から被爆者265人分のお見舞金が送られました。
 憲法学者の小沢隆一さん(東京慈恵会医大教授)が「被爆70年に改めて日本国憲法を考える」と題して記念講演をおこないました(講演要旨はページなかばに掲載)。続いて、「被爆70年 被爆者の死と生」と題した映像を使って、村田未知子主任相談員と的早克眞相談員が被爆者の相談の記録を証言しました。
 各地域原水協が毎月の行動で積み上げてきた見舞金が、都丸哲也東京原水協代表理事から大岩孝平東友会代表理事に手渡されました。合わせて東都生協の組合員が手作りした編み物が紹介されました。
 大岩代表理事がお礼の言葉をのべ、山田玲子執行理事が閉会の挨拶をおこなったのち、参加者は各地区ごとに訪問の計画を打合せました。

お見舞金を受け取った大岩孝平東友会代表理事と、都丸哲也東京原水協代表理事が握手をしている
お見舞金の贈呈
大きいスクリーンに投影された映像を見る参加者たち。スクリーンには被爆者が描いた被爆時の絵が映っている。
「東京の被爆者のいま」を映像で学ぶ

「年末見舞い金を贈るつどい」での小沢隆一先生の講演要旨
(要約・文責:編集部)

 今年の「被爆者に年末見舞金を贈るつどい」でおこなわれた特別講演は、「被爆70年に改めて日本国憲法を考える」をテーマに、東京慈恵会医大の小沢隆一教授が講演しました。その要旨を紹介します。

 小沢氏は、2014年7月に安倍内閣が「集団的自衛権の行使容認」を閣議決定したことは、日本国憲法を内閣の解釈だけで大転換させたものであり、15年9月に安全保障という名の戦争法を強行採決したことは憲法を破壊するものだと前置きして、この70年間の歴史を振り返りました。
 このなかで小沢氏は、安倍首相が「ポツダム宣言というのは、アメリカが原子爆弾を2発も落として『…どうだ』とばかりにたたきつけたもの」といっているが全く違う。ポツダム宣言は原爆投下の前に発表されていたのを、日本政府が黙殺していた、と述べました。
 ポツダム宣言が求めていたのは、日本の軍国主義勢力の除去、民主主義の復活強化、基本的人権の尊重、平和な政府の樹立などで、これを受けて戦争放棄と戦力不保持の内容を持つ九条ができたこと。憲法制定の中心になった幣原喜重郎国務大臣が「兵隊のない、武力のない、交戦権のないというのは、それが一番日本の権利、自由を守るのによい方法である」と述べていることを明らかにしました。
 安倍政権が集団的自衛権行使、戦争法実施を急ぐのは、日米ガイドラインに基づく「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的な日米共同の対応」の実施のためと指摘し、戦闘行為がおこなわれている現場以外、地球の裏側を含めて場所を問わずアメリカ軍への支援活動ができるようにしたと述べました。
 これは相手側からすれば、敵対行為に直接参加することになり、文民としての保護を受けることはできない、だから自衛隊員は、軍人としての捕虜扱いもされず、文民としての保護も受けられない、きわめて不安定な地位に置かれると述べました。
 小沢氏は最後に、いまは戦後日本の「平和主義」の岐路にあり、「殺し・殺される」ことがなかった日本が変わることを強調。集団的自衛権の行使を決めた閣議決定を撤回させ、戦争関連の11本の法律を廃棄させるためがんばろう、と結びました。

小沢隆一さん
東京慈恵会医科大学教授。専門は憲法学と政治学。「九条の会」の一員としても、各地で講演活動をおこなっている。

お見舞い訪問の報告

 つどいで贈られた見舞金と編み物は、被爆者地区の会と地域原水協が訪問活動で届けました。報告があった地区から紹介します。(順不同)

 2班に分かれ原水協の人の運転で訪問しました。東京土建港支部の餅つき大会で用意されたつきたての餅も届けました。足腰の弱っている人が多く、2014年まではプールに通っていたが今は車いす生活になり、お話しもほとんどご主人とした人、独居で2014年より腰を悪くし歩行器を購入して生活している人、寝たきりで妻と娘による介護を受けている人もいて、資料で介護制度のポイントを説明しました。
(高木恭之)

訪問先のお宅で、訪問者2人と訪問先の被爆者。玄関内と思われる屋内。(キャプションには「要介護の人が増えているが」とあるが、この方が要介護なのかどうかは写真からはわからない)
要介護の人が増えているが

世田谷

 2015年12月25日と27日の2日間、合わせて9人の方にお見舞金を届けました。今回お訪ねした人は、いずれも90歳近い年齢の方でした。脳梗塞による半身のマヒで要介護4の人以外は、一見お元気そうでしたがほとんどの方が足腰に不安を抱えているようでした。
 今まで一度も話したことはないと前置きして、被爆直後の悲惨な体験を話し出した人がいました。まだまだ多くの方が、自分の体験を話していないことを、あらためて感じました。こういうお話を聞くことができたのも、今まで地道にお見舞い訪問を続けてきた成果だと強く感じました。
(杉野信子)

玄関先で、訪問者と訪問先の方4人の写真。暖かそうな日射しのなか笑顔のみなさん
訪問ごとに新たな出会い

武蔵野

 2015年12月19日、武蔵野けやき会の役員2人と原水協の1人で訪問しました。
 足が不自由で自宅介護を受けている人、耳の遠い夫が施設に入所している妻をいたわっている姿など、それぞれに事情を抱えておられ、生きていく大変さが偲ばれました。訪問を喜んでくださりながら、こちらの名前が思い出せず、やっとわかり合えて大笑いしたり、年1回でもコミュニケーションが持ててよかったと思います。
(梅岡功)

施設にて、お見舞い金を手渡している場面。
年1回でも交流を大切に

町田

 事前の電話にも出ない人がいて、心配しながら訪ねたところ、「電話には出ないことにしているので」と言われ、訪ねてよかったと思いました。原水協の人の協力で各お宅を訪ねることができ、訪問先でも喜んでくださいました。年会費を納めていないからとお見舞を遠慮される人もいました。
(神戸美和子)

訪問先のお宅でお見舞い金を手渡す訪問者と受け取る方。
顔と顔を合わせた会話