被爆者の地位は日本からの出国で失われない 長崎地裁が判決
李康寧裁判で
韓国に帰っても健康管理手当は継続支給されるべきだと、国を相手取って裁判をしていた韓国人被爆者・李康寧さん(74歳)に、長崎地裁は2001年12月26日、「被爆者の地位は(日本からの)出国で失われない」として援護法の適用を認め、国に未払い手当103万円の支給を命じました。
在外被爆者に援護法の適用を認めたのは、2001年6月、大阪地裁の郭貴勲訴訟での判決についで2件目。判決は、援護法について「根底には国家補償的な配慮があり、在外被爆者に不利益となる限定的な解釈はすべきでない」「在外被爆者を適用除外とするなら、明文で規定されていたはず」とのべています。
李さんは北九州生まれ。長崎市内の徴用先の寮で被爆。1994年7月に被爆者健康手帳と健康管理手当を取得、9月に釜山に帰国して手当をうち切られました。
在外対策に5億円とは言うが…
在外被爆者への援護法適用判決が続いたにもかかわらず、政府はこれを認めないまま、平成14年度予算で在外被爆者支援費5億1700万円を計上しました。内容は、被爆者健康手帳取得のための渡日費用、宿泊費の支給、渡日治療、海外へ専門医派遣費、医師研修費などです。援護法は適用しない、日本に来れば日本にいるあいだは手帳を交付する、というもので、在外被爆者支援費とは名付けられていますが、実際の在外被爆者の要求とはほど遠い内容です。
「控訴するな」座り込み
判決を受けて、そして上記の予算案を受けて、李康寧さんと支援者は、寒風をついて12月27日、厚生労働省前で座り込みをして「政府は在日・在外で被爆者を差別するな 李裁判に控訴するな 郭裁判の控訴を取り下げよ」と要求しました。東友会からはポケットカイロを懐に、16人が参加しました。
厚生労働省は控訴
しかし厚生労働省は、1月8日、福岡高裁へ控訴しました。控訴理由は以下の3点です。
- 健康管理手当を原爆医療と切り離して支給するのは制度になじまない
- 援護法が制定されたとき在外被爆者への支給修正案が否決されている
- 広島地裁は援護法は国内でのみ適用されると判決している