原爆症認定の傾向――7年間310件の事例から
被爆者数が減り続けるなかあいかわらず高い申請の敷居
厚生労働省が原爆症認定審査に関する「新しい審査の方針」を2013年12月に最終改訂してから2020年末で7年が過ぎました。この7年間に、東友会が協力した認定申請について310件の審査結果が届いています。
認定件数は増えたが
認定は289件(93.2%)。内訳は、がんや白血病などの悪性新生物が246件(認定件数中の85.1%)でした。これは、「審査の方針」が放射線起因性を積極的に認定する被爆状況を他の疾患より広い「3.5キロ以内直接被爆、100時間以内2キロ以内入市など」とされているためです。
「被爆距離2.0キロ以内、翌日までに1キロ以内入市」が基準とされた心筋梗塞など心疾患は21人(7.3%)、甲状腺機能低下症と肝機能障害はそれぞれ7人ずつ(2.4%)でした。さらに狭い直接被爆1.5キロ以内が基準とされた白内障は2人(0.7%)。それぞれ1人だけ認定されたのは、「審査の方針」に指定された病名のひとつ副甲状腺機能亢進症の被爆者と、長崎の700メートルという至近距離で被爆した被爆者の脳梗塞、訴訟で勝訴した原告のバセドウ病でした。
却下は21件(6.8%)。却下の理由は、被爆状況から放射線起因性を認められないとされた12件(57.1%)、原爆症認定のもうひとつの基準「要医療性」を認められないとされた4件、審査に必要な医学的な資料が添付できなかった4件、医師ががんと診断して手術をした検査結果を見て、厚労省が悪性と認定できないとした1件でした。
申請をあきらめる被爆者も多く
この7年間の審査結果から担当相談員が新しい問題点だと考えている事例は、甲状腺機能低下症の発症前の検査データがわかるカルテが残っていないため資料不足とされる、がんの治療を施設入所や認知症などのため中止した被爆者の「要医療性」が認められないという2点でした。
申請数のうち却下が圧倒的に少ない背景には、「審査の方針」の基準で認定が難しいことを知り、申請を断念している被爆者が多数いることを忘れてはなりません。