被爆74年目の広島・長崎 被爆者・市民の願いと政府の落差浮き彫り
東友会は、2019年も広島・長崎に代表を派遣し、原爆犠牲者の追悼事業をおこないました。広島・長崎両市からの依頼による遺族代表は、広島市に石飛公也業務執行理事(国分寺)と長崎市に藤本竹次さん(武蔵野)、東京都からの委託事業による死没者調査員として、広島市に柚木聚さん(豊島)、長崎に江口幸子さん(中野)、両市に村田未知子業務執行理事(事務局)を派遣しました。
広島 「平和宣言」で核兵器禁止条約の批准求める
8月5日、広島派遣代表は鶴見橋西詰の「被爆者の森」に植樹したイチョウの生育を確認した後、広島市中央公園の「東京の木」ケヤキの前にで地区の会の代表とともに献水式をおこないました。式では、被爆40年を期して植樹した当時の被爆者の願いが紹介され、参加者全員が献水しました。その後代表は広島市国際会議場を訪ね、東京で2018年度亡くなられた173人の原爆死没者と広島市の名簿との照合を依頼しました。
6日、代表は地区の会の派遣者とともに、平和祈念式に参列。式典は、原爆死没者名簿の奉納、広島市議会議長の式辞、広島市長などの代表献花の後、8時15分の原爆投下時に1分間の黙祷。広島市長の「平和宣言」、子ども代表による「平和への誓い」に進行しました。
東京の被爆者の短歌を引用
2019年の平和宣言には、文京区の文友会会長・村山季美枝さん作の短歌「おかっぱの頭から流るる血しぶきに 妹抱きて母は阿修羅に」が採用され、感動を呼びました。
式典に参加した被爆者からは、「今年やっと広島市長が平和宣言で日本政府に核兵器禁止条約の批准を求めることを明確にした。長崎に遅れていて恥ずかしかったがホッとした」「安倍首相は一貫して核兵器廃絶に背を向けている。あれでも被爆国の首相なのか」との声がありました。
式典の後、東友会と地区の会の代表は、雨をついて葛飾区と葛友会が毎年実施しているレストハウス近くの葛飾の木・クスノキへの「献水の儀」に参加。48年前に東友会と神奈川県原爆被災者の会の慰霊墓参団が原爆供養塔の脇に植樹した「イチョウ」8本の生育を確認し、慰霊碑に参拝して献花しました。
長崎 被爆国の首相として核廃絶の先頭に
長崎派遣代表は、8月9日に長崎市平和公園内に植樹されている葛飾の木・クロガネモチへの「献水の議」に参加した後、「東京の木」クロガネモチへの献水式をおこない、近くに植樹されている目黒、足立、江戸川の木の生育も確認しました。
その後、平和祈念式典に参列しました。
長崎の式典も市議会議長の式辞、原爆死没者名簿の奉納、献水と献花のあと原爆が投下された11時2分に黙祷がよびかけられました。
2019年の長崎市長による「平和宣言」では被爆者の詩が紹介され、核兵器禁止条約に背を向ける日本政府に対し、「唯一の戦争被爆国の責任として、一刻も早く核兵器禁止条約に署名、批准してください」とつよく訴えました。
被爆者代表が首相に直言
2019年の被爆者代表として「平和への誓い」をのべた山脇佳朗さんは、面前に座る安倍首相に、「私はこの場で安倍総理にお願いしたい」、「被爆者が生きているうちに世界で唯一の被爆国として、あらゆる核兵器保有国に『核兵器をなくそう』と呼びかけてください。この問題だけはアメリカに追従するのではなく、核兵器に関するすべての分野で『核兵器廃絶』の毅然とした態度を示してください」と訴えました。
東友会の代表は、式典後に平和祈念像に献花し、その後長崎市役所を訪ね、原爆被爆者対策部を訪問、懇談。128人の原爆死没者と長崎市の死没者名簿の照合を依頼しました。
安倍晋三首相は、2019年も広島・長崎両市の式典で挨拶しましたが、例年通り「核兵器禁止条約」の批准にも被爆者援護の充実にもふれず、原爆症認定問題も審査基準の改定ではなく審査期間の短縮をすすめることだけについて発言しました。