東京被爆二世・三世の会(おりづるの子) 一歩をふみだせる一年に
被爆80年の年明けにあたり、被爆者とともに被爆二世、三世が力を合わせて、核兵器廃絶を広く社会に訴えていこうと決意を新たにしています。
被爆体験継承の前進と不安
結成10年の節目を経たおりづるの子は、被爆体験の継承というテーマに少しずつですが取り組んでいます。2023年には、本会総会にて澤原義明さん(副会長)が「健康といのち――白血病で逝った母の思いを継いで」を、12月には被爆体験伝承者の野田信枝さん(会員)が「広島・末岡昇さんの被爆体験と平和へのねがい」を語りました。さらに本会『10年の歩み』(2024年5月発行)に親との体験談を綴ってくれた会員もいます。
しかし、親の被爆体験を「直接聞いた」という会員はそれほど多くはなく、また自身が体験していないことを語れるだろうかという不安があることもわかってきました。
「高校生が描く原爆の絵」に学ぶ
2024年11月3日には、『広島市立基町高校「原爆の絵」の取り組み 青年劇場公演「あの夏の絵」に寄せて』(後援・東友会)を開催しました。広島平和記念資料館が2007年度からおこなっている、被爆体験証言者の記憶に残る被爆時の光景を高校生が絵に描くという取り組みと、これを核に制作された演劇「あの夏の絵」(青年劇場)から、被爆体験の継承の課題を語り合う学習会を開催しました。青年劇場の運営に携わるおりづるの子会員が中心となって企画。当日は絵画を制作した卒業生、竹本茜さん、一ノ間照美さんのお二人と、青年劇場の演出家の福山啓子さんの語りからじっくり学ぶ時間となりました。
竹本さんは、國分良徳さんの証言にもとづく「爆風で下敷きになり焼かれた軍人の骸骨(広島第一陸軍病院第一分院内)」を、一ノ間さんは、長尾ナツミさんの証言にもとづく「後に生きる人たちへ」をそれぞれスライドで映しながら、制作中は、見たことも体験したこともないことを描くことに困難や苦しさを感じたけれど、卒業後10年を経て、被爆体験の一端を残すことができたことの意味を改めて考えているそうです。
「高校生が描く原爆の絵」の取り組みに多方面から関心を寄せてきた2人の研究者が大学のゼミ生を誘ってくださり、会場にはたくさんの若者の参加もありました。「被爆者の話を聴いた者としての責任」という言葉が心に響いたといった感想が寄せられました。体験のない者が原爆の実相継承に取り組むさい、何を受け継ぐのか、どのような方法で伝えるのか――今回は、制作プロセスを含む絵画、そして演劇から学びましたが、音楽や文学などさまざまな方法へと視野を広げる可能性も考えた学習会でした。
会員に何ができるのか
こうした活動を振り返り、2025年はまず、「被爆二世・三世が語り継ぐ被爆体験」というテーマで、おりづるの子会員2人が話をするという試みの学習会を開催します(3月2日)。一人は青木克明会長で、「廣島陸軍被服支廠と切明千枝子さんの被爆体験」と題して、高校生が描いた切明さんの体験の絵画と切明さんの短歌で構成する話です。もう一人は中村尚子運営委員が、爆心から500メートル圏で家族4人を亡くした叔父の体験を、残された手記にもとづいて構成して話します。
日本被団協のノーベル平和賞を契機にして、被爆80年の2025年はさまざまな取り組みが予定されています。各地の原爆展や東友会の取り組みへの協力や参加を、今まで以上に、二世・三世、そして広く市民に呼びかけいきたいと思います。「被爆の体験は詳しくは知らない」という被爆二世・三世が一歩をふみだすことのできる一年にするために、さまざまな活動スタイルを探っていきます。