被爆者相談所および法人事務所
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原爆症認定にかかわる動き 2019年5月

被爆者と厚労省の事務折衝 厚労省は審査の現状維持を主張

 2019年5月22日、日本被団協、原爆症認定原告団・弁護団と厚生労働省との事務折衝が開かれました。
 これは、2009年8月に日本被団協と当時の麻生太郎首相・自民党総裁の間で交わされた「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」に基づいた大臣との定期協議の際に被爆者側が求めてきたもの。
 被爆者側から、木戸季市日本被団協事務局長など、原告団の綿平敬三さん、弁護団の宮原哲郎・中川重徳弁護士が、厚労省側は健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室の小野雄大室長などが対応しました。
 被爆者側から、「確認書」には「今後、訴訟の場で争う必要のないよう、この定期協議の場を通じて解決を図る」と約束されているが、厚労省の対応は機械的で、司法の判決に応えていないと指摘。「当面の要求」(下表)は、裁判所の判断結果に基づくもので、法律の改定が必要なく、厚労省の判断だけで実現できる内容であるとして、早急に改定してほしいと要請しました。
 小野室長らは、「被爆者に寄り添いたいと考えている」と述べながらも、科学的知見にもとづく公平な行政をおこなう立場から、現在の認定審査の基準を変更できない旨の発言をくり返しました。しかし、「年2回の事務折衝は大切にしたい」と明言。今後も継続して協議の場を持つことを確認しました。

日本被団協の「当面の要求」

現在の審査基準(新しい審査の方針)に対して求めている変更です。
強調箇所は、「当面の要求」で変更を求めている内容
申請疾病のうち、囲んであるものは新規の追加を求める病名

「放射線起因性」に関わる積極認定の基準について
区分 申請疾病 被爆条件
直接被爆 入市被爆
1
  1. 悪性腫瘍
  2. 白血病
  3. 副甲状腺機能亢進症
  4. 心筋梗塞
    狭心症
  5. 甲状腺機能低下症
    甲状腺機能亢進症
  6. 慢性肝炎・肝硬変
  7. 脳梗塞
爆心地から約3.5キロメートル以内
  • 原爆投下から約100時間以内に爆心地から2キロメートル以内に入った
  • 原爆投下から約100時間経過後から約2週間以内の期間に、爆心地から約2キロメートル以内に1週間程度以上滞在
2 放射線白内障(遅発性放射線白内障を含む 爆心地から約1.5キロメートル以内 ――
「要医療性」の判断について
申請者の疾病に放射線起因性が認められることを前提に、積極的治療行為に限定せず、経過観察が必要な場合を含めて幅広く認めること。
総合認定について
積極認定に該当する以外の申請についても、被爆から70年以上を経た被爆者の実情と、国家補償的配慮が制度の根底にあることを踏まえ、申請者に係わる被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を総合的かつ柔軟に判断すること。

大阪と長崎2つの地裁で判決 7人中3人勝訴
裁判所と厚労省 判断の落差が浮き彫り

 2019年5月末、大阪と長崎の地方裁判所がノーモア・ヒバクシャ訴訟の判決を相次いで言い渡し、7人の原告のうち3人が勝訴しました。

大阪

 23日の大阪地裁(松永栄治裁判長)は、広島被爆の原告2人のうち、爆心地から2.5キロで被爆した慢性腎不全の原告については勝訴判決を言い渡しましたが、1.5キロ直爆の原告の慢性肝炎と糖尿病の申請疾病については、軽度の脂肪肝によるとして「放射線起因性」を認めず、敗訴判決を言い渡しました。

長崎

 27日には長崎地裁(武田瑞佳裁判長)で長崎被爆の5人の原告に対する判決の言い渡しがありました。
 長崎の判決は、被爆2.5キロ直爆の急性心筋梗塞、2キロ直爆の甲状腺機能低下症の2人の原告は勝訴させましたが、慢性肝炎、舌がん、皮膚がん(ボーエン病)の3人の原告については「要医療性」を認めませんでした。

 この判決に対して、大阪の慢性肝炎と糖尿病の原告は大阪高裁に、長崎の慢性肝炎と皮膚がんの原告2人は、福岡高裁に控訴しました。
 今回勝訴した3人の原告について厚労省は判決を認めて控訴を断念しましたが、今回の判決でも、厚労省の審査と裁判所の判決との大きな差が改めて示され、「裁判ができない被爆者」が通常の申請をしても認定されないことの不公正さが、またしても明らかになりました。