原爆症認定近畿訴訟大阪地裁判決 原告8人全員が勝訴
2013年8月2日、大阪地方裁判所が、近畿地方在住の被爆者8人が申請していた原爆症認定を国が却下したことについて「放射線起因性が認められ、却下は違法」との判決を言い渡しました。8人のすべてが、国が「積極的に認定する」とした被爆状況と病名で申請していましたが、却下されていました。
東京地裁に提訴している被爆者を支援している東友会は、2日に厚生労働省前で「控訴するな」の街頭行動などを展開。4日は200を超える団体と個人に「控訴するな」のファクシミリを厚労省に送るようよびかけ、広島・長崎で開催されていた原水爆禁止世界大会をはじめ全国的にこの運動が広げられました。
安倍晋三首相は9日午後、長崎市の平和式典の後の記者会見で、「さまざまな観点から検討、総合勘案し、控訴しないこととした」と述べ、控訴を見送る方針を示しました。
2008年4月に「新しい審査の方針」新基準による審査が実施された後、国の「申請を却下」の処分の取り消しを命じた地裁判決はこのほかにも大阪地裁で3件出されていますが、国はすべて敗訴し、控訴していません。
現在、東京地裁に提訴している31人をはじめ、全国で100人以上が大阪、広島、熊本などで個別訴訟を起こしています。
「原告、弁護団と面会せよ」「控訴するな」「制度の抜本改善を」
大阪地裁判決後に厚労省前で行動
「集団訴訟のときと同じだ。最初に近畿の判決で勝って、全国に広げて固めて、制度を変えたように、今回もたたかえば勝てる」
8月2日、大阪地裁で全員勝訴の知らせを聞いた東京の原告と被爆者、弁護団と支援者60人が厚生労働省前に集合。熊本の原告と弁護士も参加し、午後3時半から、厳しい暑さの中で、「原告、弁護団と面会せよ」「控訴するな」「制度の抜本改善を」と訴えました。
午後4時、大阪から上京した弁護士が到着すると歩道に2人の職員が出てきましたが、面談は拒否。怒りを持った参加者が次々とマイクを持って、大阪地裁の判決内容や被爆の実相、被爆者の苦しみを訴え、「厚労省は面談せよ」とシュプレヒコールをくり返しました。
しかし、行動開始から1時間半が過ぎても、厚労省からは回答がなく、「足が痛む」という被爆者が増えてきました。さらに2時間過ぎても回答がないため、被爆者の健康を考えた弁護団は路上で要請文だけを渡しました。
放射線の影響を幅広く認めた大阪地裁判決
大阪地裁は、8人が申請していた疾病のうち、狭心症、心筋梗塞については「放射線被曝との間に関連性を認めることができ、そこに一定のしきい値は存在しないと考えるのが合理的である」とし、甲状腺炎、甲状腺機能低下症については「放射線被曝との関連性については、低線量域を含めて、一般的に肯定することができる」と判断しました。
さらに、舌ガンの手術の後遺症のため神経が切断されたことが原因になって腕が上がらなくなった被爆者の「後遺症」も、放射線起因性を認めました。
「この判断をあてはめれば、いま東京地裁に提訴している31人のほとんどが認定されることになる」「このような判決がつづけば、厚労省は『新基準』の額面通りの審査をおこなうしかないだろう」と、行動に参加した被爆者は話していました。
番号 | 性別 | 被爆時年齢 | 被爆地 | 被爆状況 | 疾病名 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 男 | 7 | 長崎 | 8月10日入市 | 狭心症 | |
2 | 男 | 15 | 広島 | 2.5キロメートル | 心筋梗塞 | |
3 | 男 | 19 | 長崎 | 4.5キロメートル 9日、11日入市 |
心筋梗塞 | |
4 | 男 | 10 | 広島 | 8月10日入市 | 舌ガン術後後遺症、甲状腺機能低下症(橋本病) | 死去 |
5 | 男 | 10 | 長崎 | 2.7キロメートル 8月9日入市 |
甲状腺機能低下症 | |
6 | 男 | 19 | 広島 | 3.6キロメートル 8月6日入市 |
心筋梗塞、白血球減少症、骨粗しょう症 | |
7 | 男 | 19 | 広島 | 3.5キロメートル 8月8日入市 |
貧血症、心筋梗塞 | |
8 | 男 | 4 | 長崎 | 2.1キロメートル 8月11日入市 |
甲状腺機能低下症 |