【連載】役員の紹介「八十路を越えても」
東友会を支える80歳以上で元気に活躍する東友会のみなさんを順次、紹介していきます。
第16回 前協議会理事(江戸川) 德能一馬さん
德能さんは30年前、被爆者援護法制定運動に、熱心に参加していました。その頃多くの被爆者が、自分の被爆状況、広島・長崎での惨状を訴えて支援を広げましたが、德能さんは話しませんでした。
2015年7月20日の第35回江戸川区原爆犠牲者追悼式でした。「私はこの場所に立つまで70年かかりました。償いの70年です」。德能さんはこう語りだしました。德能さんは14歳のとき広島市水主町(かこまち)爆心地から1.3キロの自宅内で被爆しました。崩れた自宅の下から抜け出すと一緒にいたお母さんがいません。警防団の人に「お母さんを探してあげるから逃げなさい」といわれ、火に追い立てられて逃げました。しかし、お母さんは自宅の近くで焼死していました。
70年間の德能さんの心の傷は、「なんで母をもっと探さなかったのだろうか」「母が逃げ遅れたのは、私を捜していたからではないか」という思いでした。
2017年がんの手術を受け、87歳になったので、2018年から協議会理事会を辞任しましたが、核兵器廃絶はお母さんへの弔いですと話しています。(村田未知子)