核不拡散条約脱退を撤回せよ 日本被団協、北朝鮮に要求
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、核不拡散条約(NPT)からの脱退を2003年1月10日に宣言し、国際原子力機関(IAEA)の核査察も拒否し、原子力発電所の建設工事を再開したことは、世界に衝撃の波紋を広げています。日本被団協は、1月14日に声明を発表し、「脱退宣言の撤回」を求めました。声明は、北朝鮮が「核兵器製造の意思はない」といっても、新たな核兵器開発を禁止したNPT条約からの脱退は、「核兵器開発に道を開くことを宣言したのと同じ」ときびしく批判。核兵器を外交の道具に使うな、脱退宣言の撤回を、と強く求めています。
東友会常任理事会でも論議
1月18日に開かれた東友会常任理事会では、藤平典副会長が日本被団協声明を説明しました。これにたいして、「アメリカは、イスラエル、パキスタンの核兵器の拡散を認めながら、北朝鮮の核拡散を認めないのはなぜか」「隣家に暴力団がいるのと、北海道に暴力団がいるのとでは危険に違いがあるのは当然」などの質問や意見が出されました。
これにたいし、「アメリカ国民のなかにも、核兵器廃絶の思いは広がっている」「アメリカに追従する国とそうでない国との違いもあるのではないか」「被爆者はどこの国の核も認めない」などの意見が出され、核問題での関心の深さを示していました。
解説 「核」とは原発
北朝鮮が再開した「核関連施設」とは、黒鉛減速型原子炉のことです。これは原子力発電炉としては古い型で、日本でも世界でもほとんど使われていません。北朝鮮は、ロシアから技術提供を受けて運転し、また新たに建設していました。この原子炉が核兵器に利用しやすいプルトニウムを生産しやすいことから、1994年10月の米朝枠組み合意でこれをやめ、軽水炉原発の建設が決められました。
1995年3月に「朝鮮半島エネルギー開発機構」(KEDO)理事会が日米韓とEU(欧州連合)とで発足。同年12月に、2003年までに100万キロワットの発電容量の軽水炉2基を建設する、その総事業費は46億ドル、負担額は韓国が32億2000万ドル(70%)、日本10億ドル(21.7%)、不足額はアメリカの責任で調達する、第1基の原子炉が完成するまで代替エネルギーとして年間50万トンの重油を提供することがきまりました。
これに基づいて軽水炉型原発の建設が進んでいましたが、2002年10月、アメリカのケリー国務次官補が訪朝時に、北朝鮮が核開発を認めたと発表、これを受けてKEDOが重油提供の凍結を決定。これに対抗して北朝鮮は黒鉛原子炉の再稼働をIAEAに通告。IAEAの査察官2人を追放。1月10日にはNPTからの脱退を宣言したものです。
北朝鮮は、重油提供がなければ原発を再稼働するしかないとしていますが、原発稼働によって生産されるプルトニウムの処理については不明確で、ミサイル実験の再開懸念、NPT条約からの脱退宣言とあわせて、世界の不安をよんでいるものです。