被爆者相談所および法人事務所
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誤った「放射線の知識」をばらまく政府広報に厳重抗議する

一般社団法人東友会業務執行理事 山本英典

山本英典 業務執行理事

 2014年8月17日、全国紙各紙に「放射線についての正しい知識を」と題する「政府広報」が、全1面を使って復興庁、内閣官房、外務省、環境省の連名で掲載されました。
 これは福島第1原発の事故による、放射線被害に不安を持っている人びとを対象にした講演を紹介したものです。
 このなかに、広島・長崎の原爆被害を引き合いにして次のようなことが書いてあります。
 中川恵一東大准教授「全身に2000ミリシーベルトを浴びた方も多かった広島や長崎でさえ遺伝的影響はなかったと考えられています」
 レティ・キース・チェム国際原子力機関(IAEA)保健部長「高い線量の放射線の影響については、広島や長崎の原爆被ばく者の健康調査などにより、多くのことが分かっています。かなり高い線量でない限り、健康への影響は出ないということです」
 これらの発言は被爆の実態に合っていません。遺伝的影響の有無は、医学的にも統計的にも未確定です。しかし被爆者の親が子どもの健康について心配していること、被爆者の子たちの中にも、「自分の病気は原爆のせいではないか」と心配している人が大勢いることは事実です。
 「かなり高い線量でない限り健康への影響は出ない」のなら、被爆後救援活動をした人、黒い雨をうけた人びとの中に、多数の放射線障害を発症した人びとがいた事実を、どう説明するのでしょうか。「影響がない」のなら原爆症認定訴訟は起きなかったでしょう。
 全国紙全1面の広告料は数百万円もするはずです。全国5紙なら数千万円になるはずです。国民の税金を使ってこんな誤った「知識」をばらまく無駄遣いは許すことができません。
 東友会は「政府広報」と連名の各省庁に、厳重に抗議し、撤回を要求することにしています。

【追記】東友会は、この談話に基づいた抗議文を関係の会議で確認し、2014年10月9日、関係省庁に送りました。(抗議文送付を伝えた記事