『はだしのゲン』自由閲覧継続を求め都教育委員会へ請願
2014年1月8日、映画監督の有原誠治さんから、9日に東京都教育委員会(都教委)で「『はだしのゲン』の閲覧制限を求める」請願などの審議がおこなわれるという知らせが入りました。
東友会は2013年暮、「中沢啓治さんの『はだしのゲン』は原爆の実相を伝える作品。国内だけでなく海外でも原爆を知るうえで必読といわれる同書を、閲覧制限することは被爆者団体として認めることはできない」との立場で、「はだしのゲンの自由閲覧を求める請願」行動に参加。大岩孝平東友会代表が呼びかけ人に名前をつらねました。
しかし都教委での審議が告知されたのは2日前。東友会は緊急に署名を呼びかけ、半日で30人分が集まりました。8日午後、事務局員が集まった署名を持って都庁にかけつけ、他の呼びかけ人とともに都教委へ請願署名を提出。急な呼びかけにもかかわらず、合計で個人署名383人分、団体署名9団体分集まりました。
『はだしのゲン』の撤去請願は退けられる
1月9日午前、都教委は『はだしのゲン』の取り扱いをめぐる12本の請願(撤去、除去、排除の請願3本。自由閲覧を求める請願9本)などに対し、「『はだしのゲン』について『教育現場からの撤去』あるいは『自由閲覧の維持』などを求める請願には、応じることはできません」との回答(案)を審議し、了承しました。
回答(案)は、「学校図書館にはさまざまな図書館資料が置かれることが必要である」と明記し、都教委としては特定の図書の撤去や閉架措置を指示しないことを示しました。
しかし同時に、「『はだしのゲン』については、暴力的な表現など、その一部に教育上の配慮が必要な表現がある」とし、「読書指導については、児童・生徒の発達段階に応じて適切に行われなければならない」とも記しています。
そして最後に、「(都教委は)我が国と郷土を愛する態度や、国旗・国歌の意義等について、児童・生徒を正しい理解に導くよう、都立学校や区市町村教育委員会に対して指導・助言を行ってまいります」と結びました。
今回の判断は、学校図書館から『はだしのゲン』を撤去しないが、学校現場の図書選定や読書指導などが愛国心を育む教育にのっとって「適切」におこなわれるよう、教育現場への介入を示唆した内容となっています。
今後、都教委のこのような姿勢が、区市町村の教育委員会や学校現場に具体的にどのような形で現れるのか引き続き注視していくとともに、被爆の実相や戦争の実態を伝え続けることの重要性をあらためて示すものとなりました。