被爆者相談所および法人事務所
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あずま原爆裁判控訴審が結審 最終弁論に傍聴席で涙

3弁護士が気迫の訴え

 あずま原爆裁判の控訴審が結審となった2004年12月24日、東京高裁に140人が詰めかけました。あずま原爆裁判とは、長崎の三菱兵器大橋工場(爆心地から1.3キロメートル)で被爆したあずま数男かずおさん(76歳・町田市在住)が、肝機能障害(C型)を原爆症と認定してほしいと1999年6月に国を相手におこしたもの。2004年3月に東京地裁はあずまさん全面勝訴の判決を言い渡しましたが、国が控訴したため、高裁で裁判が続いていました。
 3回目の弁論となったこの日、池田眞規弁護士と高見澤昭治弁護士、長崎松谷原爆訴訟の弁護団事務局長として活躍した中村尚達弁護士が意見陳述。弁護士の陳述がはじまると満員の傍聴席では、大きくうなづきながら聞く人、涙をぬぐう人の姿も見られ、陳述が終わるといっせいに拍手がわき上がりました。
 控訴審の判決は3月29日に言い渡されます。

弁護士会館にロビーに集まった人たち。
東控訴審・結審の傍聴にかけつけた人たち

東控訴審 最終弁論 (要約:「東友」編集部)

根本の問題は日本政府の核政策 池田眞規弁護士

 原爆症認定訴訟の本質的な問題について述べます。
 控訴人日本政府は日本の防衛を米国の核兵器の抑止力に依存しています。核不拡散条約に加盟し核兵器開発は禁止されています。この基本政策により、日本は核兵器の情報を、すべて米国に依存しています。原爆症認定制度の認定基準の作成も、米国の核兵器情報に依存する関係ででき上がっています。
 米国が原爆を開発した目的は、衝撃波による地上の建物の破壊力の強度をいかに強めるかであり、広島や長崎に使用して初めて、熱線や放射線による被害が、想像もしなかった甚大な被害をもたらすことを知ったのです。
 日本の科学者が、米国の科学者に代わって原爆放射線による原爆症の仕組みや治療方法を解明することは、現実に不可能です。まして被爆者に、原爆症の放射線の起因性を立証する義務を負担させる現行の認定制度は、科学者でさえも立証の不可能なことを被爆者に強いるという非合理かつ残酷な制度であります。
 認定制度を科学的に運用しようとするならば、「原爆放射線の影響による傷害ではないという証明」がない限り、原爆症と認定する、というのが被爆者にとり最も科学的な認定業務です。

池田眞規弁護士

C型肝炎等に苦しむ被爆者を救済せよ 高見澤昭治弁護士

 厚生労働大臣は、原爆症認定訴訟において、松谷訴訟最高裁判決をはじめ、本件を含めて連続6度にわたり裁判で敗訴しています。
 厚生労働大臣の考え方は、「被爆者でなければ、肝機能障害を発症させることはなかったことが立証されなければならない」というものです。そのような考えならば、「原爆症」という、他の一般疾病とは全く異なる特別の疾病が存在しない以上、被爆者が、たとえどのような病気になっても、それを放射線以外の原因ではあり得ないということを立証しなければならないことになり、およそ原爆症と認定される被爆者は一人もいないことになります。
 厚生労働大臣が、被爆者を切り捨てる背景として、予算枠や米国の核政策への配慮に加え、被爆の実相に対する無知と原爆被害を軽視する姿勢があることを指摘せざるをえません。
 東京地裁の判決は、「原子爆弾による被害は、極めて特異かつ苛酷」という理解を示しました。被爆国であるわが国の被爆者行政を、被爆者を援護するものに転換させ、C型肝炎や肝硬変などに苦しむ、高齢化した多数の被爆者を早期に救済し、核廃絶を願うすべての被爆者が納得でき、生きる勇気を与えられる判決をお願いします。

高見澤昭治弁護士

被爆者の声に国は耳を傾けよ 中村尚達弁護士

 私は、12年間たたかって勝利を得た長崎原爆松谷訴訟の弁護団の一員でした。
 私自身も3歳の時、両親とともに長崎で被爆した被爆者の1人です。爆心から約3キロで直爆をうけた私の父は、19年前食道癌で死亡しました。父の死が原爆放射線によるものとの医学的証明がなされた訳ではありませんが、私は父の死も原爆放射線によるものであると確信しています。
 被爆者がかかえている健康障害は、被爆者に特有なものではなく、非被爆者にも普通に見られる疾病であるところに原爆症認定の困難さがあります。
 被爆者は、被爆後59年にわたり健康障害に苦しみ、それが結婚の障害となり、生活の基盤となるべき職を奪われ、あるいは家族の離散、家庭崩壊に至るという、深刻な問題をかかえているのです。
 私は厚生労働省のお歴々に問いたい。あなた方は一度でも真剣に被爆者の苦痛の叫びを聞いたことがあるのか。理解しようと努力したことがあるのか。原爆被害のすさまじさについても、単に死傷者の数であるとか、通り一遍の残酷さとかでもって、これが原爆被害であると、したり顔で言ってほしくない。数万人の被爆者がいれば、そこには一つ一つ異なる数万例の原爆被害があります。
 本件訴訟は、反原爆のたたかいの歴史に刻まれる重大な訴訟であることを当裁判所においても再認識していただき、勇断をもって厚生労働大臣に鉄槌を下す判決を心から切望します。

中村尚達弁護士

12.24クリスマス行動 マリオン前 サンタの衣装で宣伝

 東友会と「東京おりづるネット」は結審日の12月24日、終日、行動しました。
 法廷終了後の正午から、厚生労働省前に200人が参加して要請行動。被爆者、団体代表、弁護士が次々にマイクで訴え、代表が「公正判決要請署名」を提出。署名の累計は448団体4899人分になりました。
 午後2時30分からは有楽町マリオン前で、サンタクロース姿になった集団訴訟原告や被爆者、弁護士、支援者らが、東京地婦連、主婦連、東京都生協連、新婦人などのクリスマス行動に合流。3時30分からはピースバード(原爆症認定集団訴訟を支える青年の会)の路上ライブコンサート、キャンドルサービスにも参加しました。
 マリオン前には、のべ180人が参加。「被爆者からのプレゼント」と書かれたキャンデー付きのビラを配布しました。

厚労省前の歩道、厚労省側に並べられた椅子に座る被爆者らと、車道側に並んで立つ支援者ら。
厚労省前要請行動の様子
サンタクロースに扮してビラを配る弁護士や被爆者ら。
被爆者や弁護士もサンタクロースに扮して有楽町マリオン前で宣伝
街頭で演奏する「Peace Bird」の青年たち。
青年たちも音楽で支援