被爆二世に医療費助成をしている自治体
被爆から59年経って、「被爆者の子」(被爆二世)の高齢化がすすんでいます。これとともに健康不安も重なり、二世に対する施策をつくってほしい、いまある施策を充実してほしいという声が広がっています。どんな制度があるか、紹介します。
国の制度
国の対策は、「原爆被爆者二世の健康に関する研究実施要項」に基づいて、年1回の健康診断がおこなわれています。2001年までは、財団法人日本公衆衛生協会に国が委託して実施されていましたが、2001年度から都道府県が受託しておこなわれています。
対象者は受診を希望する二世で、内容は被爆者健診と同じ一般検査、精密検査となっています。
この施策は法律に定められた制度ではなく、受診希望者が多いときは「未受診者、異常を訴える者」となっており、二世のみなさんからの不満があります。
東京、神奈川は、次のように別な制度です。
東京都の制度
東京都は、「東京都原子爆弾被爆者等の援護に関する条例」に基づいて、被爆者の子にたいする「健康診断」と「医療費の助成」をおこなっています。
被爆者の子(被爆二世)は、申請に基づいて東京都から「健康診断受診票(子)」の交付をうけ、年2回、定期健康診断を受けることができます。希望健診はできません。医師が必要だと認めたものについては精密検査を受けることができますが、限度額があります。ガン検診は年に1回うけることができますが、これをうけると定期健診は年1回となります。
検査項目は、被爆者と同様に追加されています。
被爆者の子(被爆二世)が、健康管理手当の支給条件と同じ11の疾病にかかり、「6カ月以上」の医療を必要とするときには、都から医療費助成が受けられます。その期限は「最長1年」ですが更新できます。医療費助成の要件に該当する人には「医療券」が交付されます。入院時の食事代は自己負担です。
神奈川県の制度
神奈川県には被爆者援護条例はありませんが、県の独自事業として、「被爆者のこども」にたいし、申請によって「健康診断受診票」が交付されています。
「受診票」を受けるためには住民票や戸籍抄本のほかに、親の被爆者健康手帳の写しが必要です。
健康診断は、定期検診と希望健診が受けられます。
「受診票」を持っている人が、健康管理手当の支給条件と同じ病気になったときには、医療費の自己負担分について県からの助成があります。受診者は、いったん医療機関で医療費を支払い、あとでその額を県に請求します。これを「償還払い」といいます。助成が決まったら、県は請求をした人の銀行窓口に振り込みます。
神奈川県の制度には、東京のように「医療期間が6カ月」とか「最長1年」といった制限的な文言がないのが特徴です。
大阪府の吹田市・摂津市の場合
大阪府吹田市では、「被爆者二世の医療費の助成に関する要項」にもとづいて、「被爆者の実子」で市内に住んでいて、年所得が1000万円以下の二世に医療費が助成されています。
希望者は、親の被爆者健康手帳、戸籍謄本などを添えて申請し、「被爆者二世登録証明書」をもらいます。
対象疾病は、健康管理手当の支給条件と同じ疾病で、医療機関で医療費を支払った後、市にたいして「医療費支給申請書および口座振替依頼書」に領収書、健康保険証、所得証明書(証明書が吹田市でとれるときには不要)などを添えて支給申請をします。
支給申請は、医療を受けた日から2年以内です。
吹田市の隣の摂津市でも、吹田市と同じ医療費助成がおこなわれています。所得制限が800万円であることだけが違っています。
愛知県の津島市の場合
愛知県津島市では、「原子爆弾被爆者二世の援護に関する要項」に基づいて二世対策がおこなわれています。対象疾病は他と同じで、助成方法は償還払い方式です。所得制限はありません。
同市の特徴は、「被爆者二世の健康、福祉増進のため、保健婦による家庭訪問その他必要な措置を講ずることができる」としていることです。
このような立派な要項がありますが、いまは対象者はいないということです。