被爆者相談所および法人事務所
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資料 原爆症認定制度の見直しの要求

 原爆症認定制度の抜本改善について、2008年2月12日に日本原水爆被害者団体協議会、原爆症認定集団訴訟全国原告団、原爆症認定集団訴訟全国弁護団が、連名で舛添要一厚生労働大臣に出した要求書の要点を紹介します。

第1 原爆症認定基準の作成について

1 新たな認定基準の制定に当たって、これまでの認定行政の誤りを率直に認めて謝罪し、被爆者救済の理念を明確にすること(「新しい審査のイメージ」第1項関係)

 与党プロジェクトチームの提言は、これまでの認定行政に対して裁判例・世論から厳しい批判が出されたこと、原因確率論が現実的救済につながっていないことなどを指摘し、それを踏まえて認定行政の改革に踏み出している。
 また、与党プロジェクトチームの提言は、「原子爆弾投下に伴う被害と犠牲の甚大さに十分思いをいたし、二度とこのような惨禍を繰り返すことのないよう輝ける平和国家、福祉国家の歩みを確たるものとしなければならない」としている。
 こうした姿勢・理念を新しい認定基準でも明確にすべきである。

2 被爆者を距離や入市時期で選別しないこと(同第2項・第4項関係)

 被爆者手帳の交付を受けた被爆者は、何らかの形で放射線の影響を受けたものと見るべきである。被爆者の中に線引きを置くべきではない。したがって、この部分は以下のようにされるべきである。

  1. 一般に放射線起因性が肯定される負傷又は疾病を「原爆症認定疾病」とし、現に医療を要する状態にある場合には、疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会の審査を経ることなく、厚生労働大臣はこれを原爆症と認定する。
  2. 「原爆症認定疾病」を政令で定める。

3 積極認定する疾病をがん、白血病などに限定せず、広く医学的知見や裁判例などで認められた疾病とすること(同第3項関係)

 具体的には下記疾病がこれに当たる。

  1. 中枢神経系腫瘍を含む全ての部位の固形癌、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫等の造血臓器悪性腫瘍
  2. 原因不明の白血球減少症、難治性の貧血、骨髄異形成症候群などの血液疾
  3. B型、C型のウイルス性肝疾患を含む慢性肝障害(慢性肝炎、肝硬変
  4. 後嚢下混濁を伴う白内障
  5. 心筋梗塞、冠動脈硬化が認められる狭心症
  6. 肺線維症
  7. 甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症
  8. 熱傷や外傷の重度の後遺
  9. 胎内被爆者の小頭症

4 個別審査に関する基準を明確にすること。その基準には、裁判で示された総合判断の基準を反映させること(同第5項関係)

 具体的には、被爆者が、上記疾病には当たらないが、放射線に起因することを否定できない疾病に罹患し、現に医療を要する状態にある場合には,疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会の審査を経て、厚生労働大臣はこれを原爆症と認定する、とするのが相当である。

第2 医療分科会を改革すること

 与党PTの提言には、「今のあり方を改め、真に被爆者の実態を理解する者を加え、十分客観的かつ事実に即した審議を行う」とされている。これまで被爆者切り捨ての先頭に立ってきた医療分科会の在り方は抜本的に改革されるべきであり、放射線の人体への影響についての知識と被爆者医療に経験のある委員で構成することとし、半数は被爆者団体が推薦する人をもってあてるべきである。

第3 控訴を取り下げ、全ての訴訟を解決すること

 前述のように、今回の原爆症認定基準、原爆症認定制度の改革は、病をおして裁判に立ち上がった被爆者原告の存在があったからこそ進めることができたものである。その原告たちの裁判を置き去りにして、解決はあり得ない。
 私たちは、勝訴した原告は直ちに控訴を取り下げて判決を確定させ、その余の原告についても全員救済をしてすべての訴訟の解決を求める。

【解説】

 この要求は、唯一、原告・被爆者の立場でとりまとめられたものです。一般に報道されている「新しい審査のイメージ」と決定的に違うのは、(1)被爆者を被爆距離や入市時期で選別しないこと、(2)積極認定をする疾病を限定しないこと――を明確に求め、国の責任で原爆被害の実態をありのまま認めた認定制度に改めるよう求めている点です。そのため、被団協、原告団、弁護団が厚労省と交渉をつづけています。