被爆者相談所および法人事務所
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「福祉定期預貯金・第3種郵便継続して」 東京選出の全国会議員に要請

 東友会は2002年2月6日、東京選出の国会議員51人全員にたいする要請行動をおこないました。要請事項は、(1)福祉定期預貯金制度の継続、(2)第3種、第4種郵便割引制度の継続、の2つでした。
 福祉定期については、2001年末から大銀行も相次いで取り扱いを中止しているところから、郵便局だけでも継続してほしいとの願いで要請したものです。要請が終わって総括会議をしている最中に、国会議員から「いま、福祉定期は2月末で廃止するという文書が総務省から届いた」という電話が入り、大騒ぎになる一幕もありました。
 第3種・第4種郵便割引制度の廃止は、読売新聞だけが2001年12月20日付で報道したもので、「初めて知った」という議員もいました。第3種郵便が廃止されると新聞「東友」の郵送料が15円から80円、90円に跳ね上がります。東友会は、制度継続のために全力を挙げることにしています。

長方形に並べられた机に着席する要請参加者と、席で立って話している川田悦子衆議院議員。
川田悦子衆議院議員も激励に

要請文の全文

 2月6日の要請行動で国会議員にわたした要請文と、翌7日に首相・各政党党首宛に郵送した要請文の全文を掲載します。

福祉定期預貯金制度の継続についての要請
(2002年2月6日、東京選出国会議員あて)

 私たち東京都原爆被害者団体協議会(東友会)は、昭和20年8月、広島・長崎で原子爆弾の被害を受け、現在、東京都内に住む原爆被爆者の単一の団体です。
 日頃から原爆被爆者にたいする施策の充実にお心配りをいただき、感謝しています。
 さて本日は、福祉定期預貯金制度についてのお願いです。この制度は、障害者や老齢福祉年金受給者など、社会的弱者のために、合計300万円までの定期預貯金につき、年4.15%の利息を政府が保証してくださってきた制度です。原爆被爆者については、医療特別手当・特別手当・健康管理手当・保健手当受給者がその対象とされてきました。
 しかし、中小の銀行で受付が停止されてきた福祉定期預金が、昨年から大手都市銀行でも次々に受付が中止され、多くの被爆者から不安の声が寄せられています。
 ご承知の通り、広島・長崎への原爆投下から56年が過ぎ、被爆者の高齢化・病弱化が深刻になっています。東京都衛生局調べでは、平成12年度末の東京在住の原爆被爆者の平均年齢は、68.4歳になりました。
 東友会は、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の施行に伴い平成9年1月から3月にかけて、掌握している7,182人の被爆者(平成9年3月末現在の東京都在住の被爆者手帳所持者の73.8%)を対象に調査をおこないました。この調査には、対象者の30.7%、2,203人が回答しました。
 この調査から、原爆のために身内を亡くしたり、差別のため家庭を持てずに独り暮らしを続けている被爆者が一般国民の2倍以上の16.7%(「高齢社会白書 平成9年度版」8.0%)、戦後の闘病生活などで生活に困窮しオている者も一般国民のほぼ2倍にあたる1.3%(「朝日年鑑 1995」保護率 0.7%)になっていることがわかりました。
 東京都知事から業務委託を受けて実施している「東友会原爆被爆者相談所」には、毎年10,000件を超える被爆者からの相談が寄せられていますが、

  • 「原爆ブラブラ病」のため長期間仕事を続けることができず、現在、年間約10万円の厚生年金(加入期間27カ月)と被爆者の手当だけで生活している被爆者
  • 生活保護基準以下の収入でも「1日500円以上は食費にかけない。頑張れるうちは頑張る」とシルバーピア(都営住宅)で孤独な生活を続けている被爆者
  • 被爆のため身寄りをすべて亡くし、原爆後障害と差別のため結婚できなかった高齢の女性被爆者
など、福祉定期預貯金の利息が生活の支えとなっている事例が多くみられます。

 「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の前文には、
 被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。
とあります。
 つきましては、この法律の趣旨にそって、原爆被爆者への「総合的な援護対策」のひとつとして、福祉定期預貯金制度を今後もぜひ継続していただけますよう要請します。

第3種・第4種郵便物の割引制を続けてくださるよう要請します
(2002年2月6日、東京選出国会議員あて)

 日頃から、原爆被爆者にたいしてあたたかいご配慮をいたたき、深く感謝申し上げます。
 さて、報道によると、総務省・郵政事業庁は、2003年度春から、第3種郵便、第4種郵便を廃止する方針を固めたということです。
 私たちは、この報道にびっくりしています。
 私たち東友会は、57年前に広島・長崎で原子爆弾の被害を受けた被爆者のうち、東京に住んでいる9000余人で構成している団体です。
 被爆者は、人類史上かつてない残虐兵器である原爆で、肉親を殺され傷つけられ、生き残ったものも、さまざまな後遺障害に苦しんできました。
 このため、孤独の人が多く、生活もままならず、いつ出てくるか分からない放射線障害による健康への不安など、被爆者同士でないと分かり合えない悩みごとを抱えています。
 東友会をはじめ被爆者団体は、こうした被爆者の組織であり、日常的に被爆者の相談にのり、被爆者を励まし、生きがいがもてるようアドバイスをしています。
 被爆者の乏しい収入から出される会費が団体の収入の主体であるため、役員は全員無報酬で運営にあたり、相談員は公務員並みの給与を目標にしながら、到底及びつかない報酬です。
 旧郵政省は、私たちのこうした事業に理解をくださり、1994年6月、第3種郵便物として認可をしてくださいました。
 被爆者団体は、心身障害者団体なみの扱いになっていますので、新聞郵送にかかる郵便料金も1通15円です。
 おかげで、今日まで月刊で新聞「東友」を、会費の範囲内で5000部~8500部を郵送しつづけることができています。
 こういう状況下で、もし第3種制度が廃止されるとなると、毎月5倍を超える支出増となります。これでは、郵便代だけで会の財政は手一杯となり、業務ができなくなります。
 必然的に新聞発行ができなくなり、被爆者に情報と励ましが届かなくなり、被爆者の孤立化がいっそう進みます。
 こういう事態を防ぐためには、現行割引制度が継続することが何より必要です。
 低所得の被爆者や障害者などに生きる元気を与えるためにも、第3種、第4種の郵便への割引制度が継続するよう、先生方の特段のご高配を要請するものです。

「福祉定期預貯金」制度を継続してくださるよう要請します
(2002年2月7日、各政党党首あて)

 私たち東京都原爆被害者団体協議会(東友会)は、昭和20年8月、広島・長崎で原子爆弾の被害を受け、現在、東京都内に住む原爆被害者の単一団体です。二度と核戦争の「地獄」を繰り返してはならないとの思いから「証言活動」などを通じて平和を訴え続けています。

 さて、私たちは、1月25日にあなたをはじめとする各政党の党首に対して、昨日2月6日には、東京都から選出された衆参両院50人の国会議員に、福祉定期預金制度の継続について要請をさせていただきました。
 ところが、2月6日、衆議院議員会館でのまとめの会議の最中に、訪問した国会議員から、現行の福祉定期郵便預金制度を廃止し「ニュー福祉定期郵便貯金」に切り替えるとの書類が届いたとの連絡がありました。
 まとめの会議に参加していた都内各地の被爆者の代表は驚き、とまどいの声があがりました。
 この書類によると、「ニュー福祉定期郵便貯金」の利率は、一般の1年の定期貯金に「1.0%」を加えた1.04%になるとされています。
 ご存じのとおり、福祉定期預貯金制度は、平成4年8月から大蔵省金融企画局長、省庁再編後の昨年は金融庁総務企画局長の通達によって、8年半にわたり、老齢福祉年金受給者や障害者、原爆被爆者の諸手当受給者など、社会的、経済的に恵まれない人びとを対象に、市場実勢を上回る優遇金利として制定され、活用されてきました。
 広島・長崎への原爆投下から57年目の年を迎え、被爆者の高齢化・病弱化はますます深刻になっています。東京都衛生局調べでは、平成12年度末の東京在住の被爆者の平均年齢は68.4歳になりました。
 とりわけ、多くの被爆者は、原爆によって家族や財産をうばわれ、放射線によって健康をむしばまれたため、戦後、十分な年金を受け取れる仕事に従事できなかった者が多く、さらに、これまでの国の調査でも明らかなように、そのほとんどが複数の病気をかかえています。
 このため、多くの被爆者の生活は、僅かな年金と月3万円余の健康管理手当で支えられています。
 この被爆者にとって福祉定期の利子は貴重な収入源となっています。
 つきましては、当初の制度の趣旨にそって、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の前文に明記されている「総合的な援護対策」のひとつとして、「ニュー福祉定期郵便貯金」制度について再考いただき、これまでどおりの「福祉定期預貯金」制度を、今後も継続していただけますよう要請いたします。