被爆者相談所および法人事務所
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東友会相談事業の2022年度実績

相談すらできない被爆者はいないか 今後の重点は地域のすみまで目を配る活動

 東友会原爆被爆者相談所で対応した2022年度(2022年4月から2023年3月)の相談事業の概要がまとまりました。

相談件数は減少傾向

 全体の相談件数は12,191件(下表「2022年度における月別相談件数」参照)。前年度から約500件の増加となりました。過去に相談件数が最も多かった2011年度の20,061件からみると、相談件数も年々減少傾向にあります。
 とりわけ、2020年4月以降は新型コロナ感染症の拡大による緊急事態宣言の発令、感染予防のための外出・集会の自粛の影響で、毎年数回開いていた地区相談会が1回も開催できず、相談所に来所しての相談もコロナ禍の下では一時的に中止していたこともあり、直接対面しておこなう「面接相談」が大幅に減りました。この傾向は2021年度も同様で、2022年度の「面接相談」が若干にしろ増えたのは、自粛規制の緩和の影響もあると思われます(下表「面接相談件数の年度別推移」参照)。

2022年度における月別相談件数
(2022年4月から2023年3月)
月別 相談件数
4月 1,219
5月 1,131
6月 1,269
7月 1,340
8月 975
9月 743
10月 869
11月 778
12月 818
1月 1,024
2月 891
3月 1,134
年度計 12,191
面接相談件数の年度別推移
年度 面接相談件数
2013 1,445
2014 2,119
2015 1,393
2016 1,167
2017 626
2018 782
2019 715
2020 320
2021 202
2022 549

相談内容と被爆者数

 近年の特徴としては、「被爆者の制度」の活用にかかわる被爆者援護法関係の相談件数が減少してきていることです。介護関係や健康相談関係などと比べると総数はまだ多いのですが、徐々に減ってきています。
 この背景には被爆者数の減少があるのは確かです。しかし、高齢化の進行で人と交わらない生活を続け、自分の困っていることを話せない、印刷物が届いても理解できないという孤独な被爆者の姿が隠されていることも十分考えられます。
 この点を、今後の被爆者相談事業の重要なポイントととらえ、「一人暮らしの被爆者に電話をするよう地区の会に働きかけよう」と、東友会相談事業委員会は、2023年の活動の重点として地区の会と東友会の連携を強化した相談活動を深めようとしています。
 一方で、被爆二世の相談件数は、近年では2018年度の3472件を最高値として増えたり減ったりしています。2022年度は、2021年度に比べて少しですが増えています。
 被爆者、被爆二世の数に注目してみると、相談が最も多かった2011年度(2012年3月末)の被爆者数は6,758人、被爆二世数は6,495人で、かろうじて被爆者数が上回っていましたが、2012年度(2013年3月末)には被爆者数が6,476人、被爆二世数が6,674人と初めて逆転します(グラフ、スクリーンリーダー用の表参照)。

【補足説明】2023年4月中旬の時点では、2022年度末(2023年3月末)の被爆者・被爆二世の数はまだ公表されていませんので、グラフもありません。一方、2022年度(2022年4月から2023年3月まで)の相談件数はまとまりましたので、過去10年間の推移に反映させました。
以下は、スクリーンリーダー用にグラフを表になおしたものです。
東友会原爆被爆者相談所相談件数と、東京都に登録されている被爆者・被爆二世の人数の10年間の推移
年度 相談件数 相談件数のうち二世に関する相談の件数 被爆者数 被爆二世数
2013年度 17,004 2,753 6,261 6,883
2014年度 17,574 2,664 6,010 7,217
2015年度 16,774 2,912 5,758 7,458
2016年度 15,070 2,870 5,487 7,673
2017年度 15,820 3,278 5,203 7,936
2018年度 15,344 3,472 4,921 8,130
2019年度 15,593 3,358 4,691 8,231
2020年度 14,179 2,964 4,402 8,370
2021年度 11,694 2,881 4,087 8,553
2022年度 12,191 3,015 未発表 未発表

相談者の状況は

 近年の特徴は、相談したいことをうまく話せない、一度説明しても何度も同じ相談をしてくるといった被爆者が増えていることです。一方、被爆二世を含む家族、病院の医師・職員、ケアマネジャー、施設のスタッフなどから、「被爆者の制度」にどう対応したらいいかの問い合わせも増えています。こうした実情から、さまざまな面で被爆者が自力で対処できなくなっている傾向がうかがえます。
 ここで、注意しておくべきことがあります。これまでは「被爆者の制度」の手続きなどをすべて自分でやっていた被爆者が突然倒れたようなとき、家族は「被爆者の制度」のことを何も知らず、途方に暮れるといった事態がたびたび起こっていることです。
 家族から「昨日まで元気だったのに突然倒れて入院し介護が必要になった。『被爆者の制度』があると聞いたけれども、どうしたらよいのかまったくわかりません」と切迫した電話がかかってくることも珍しくなくなってきました。
 同時に、高齢夫婦の老々介護、高齢単身者も増加してきており、別居親族や支援機関との連携も相談業務の重要な課題となっています。

増える被爆二世の相談

 被爆二世も、平均年齢59.5歳、最高齢76歳(2022年3月末)となり、健康や医療、介護の問題での不安や助成を求める人が急増しています。被爆二世本人や家族から寄せられる、「退職して健康診断を受けるところがなくなり、健康診断受診票を申請したい」「いろいろ病気が出てきて困っている」といった相談です。
 「自分の体調が悪いのは親が被爆しているからなのでしょうか」と不安を訴える相談も少なくありません。現時点で、親の被爆が子どもに影響するかどうかの明確な判断は出ていません。しかし、被爆者の子どもにも何かしら影響が出るのではないかという不安は、被爆者も二世も払拭することはできません。
 被爆二世に関する相談で難しいのは、被爆者のように国の法律に基づいた全国共通の制度が事実上ないことです。現状では、被爆二世対策は都道府県ごとに大きく違います。
 東京都では、親世代の被爆者が運動で勝ち取った「東京都被爆者援護条例」のなかに被爆二世(被爆者の子)が位置づけられており、がん検診を含め被爆者と同じ内容の定期健康診断を無料で受けることができます。条件はありますが、東京都独自の医療費助成もあります。
 こうした東京都独自の二世施策をもっと知らせ、都内に住む被爆二世に活用してもらえるような相談事業も求められています。

間隔を置かずに並べられた事務机に、相談員・事務局員が着席し仕事をしている。机の間にはアクリルの透明な仕切り板が立てられている。壁は棚になっていて、本などの資料の他、ケースに収められた書類などで埋まっている。
電話相談や書類の発送などの業務をこなす東友会事務所・相談所の日常風景。