被爆者相談所および法人事務所
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「黒い雨」訴訟控訴審全員勝訴 広島高裁、地裁判決をさらに拡大

 2021年7月14日、広島の指定地域外で「黒い雨」の影響を受けた84人が被爆者手帳の交付を求めている裁判で、広島高等裁判所の判決があり、原告全員が勝訴しました。
 西井和徒裁判長は、被爆者援護法には国家補償的配慮があるとし、原告全員を同法第1条3項の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」と認め、全員に被爆者手帳を交付するよう言い渡しました。
 判決はさらに、これまで指定された地域の6倍の範囲に放射性物質を含む雨が降ったとし、「黒い雨」に遭わなくても呼吸や飲食で放射性物質を体内に取り込んだ「内部被曝」の可能性も指摘。「『黒い雨』を受け、がんなどを発症した」ことを要件とした2020年7月の広島地裁の判決をさらに拡大し、広島県・市、厚生労働省による控訴を棄却しました。
 現在は、「黒い雨」の指定地域にいて被爆しただけでは「第1種健康診断受診者」としか認められません。これを被爆者手帳に変えるためには、健康管理手当に該当する病気に罹ったという証明を提出する必要があります。
 この判決は、従来より広い地域に放射線の影響を認めて被爆者手帳を交付せよとした画期的な判決で、原爆被害を狭く小さくとらえる国の姿勢を批判したものと言えます。

【解説】 特例受診者とは

 第1種特例受診者は、広島・長崎の両市の「黒い雨」が降ったとされる地域にいた人に交付されます。放射線の影響も考えられるとされ、被爆者の健康管理手当に該当する病気に罹った場合は、被爆者手帳に切り替えられ、医療費助成も手当も受けられます。

 第2種特例受診者(長崎被爆体験者)は、直接被爆で被爆者手帳を受けられる地域に隣接する地域のうち放射線の影響があったと考えられる地域(「黒い雨」降雨地域など)にいた人に認められる長崎だけの施策です。
 長崎の被爆者手帳交付と第1種特例受診者の対象にされている地域が、爆心地から南北12キロ、東西8キロ程度の楕円形になっているため、指定地域以外の12キロ以内に住んでいた人を対象に第2種特例受診者(長崎被爆体験者)の制度ができました。この制度をつくるとき、当事者と被爆者とともに長崎県・市も全面的に参加して国に要請。東友会も支援しました。
 しかし、この地域は放射線の影響はないとされ、健康診断にがん検診は含まれず、医療費助成も放射線の影響に不安を持つために発症する病気に限られました。医療証の名称も「被爆体験者精神医療受給者証」とされ、がんの医療費助成は認めず、胃潰瘍なら認めるというものです。医療費助成の対象は長崎県・市に住む者に限られています。被爆者手帳への切り替えもありません。