被爆者相談所および法人事務所
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ノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟 厚労省が上告断念 福岡高裁判決確定

 2016年4月11日にノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟の5人の原告に言い渡された福岡高裁での判決について、上告期限となった4月25日までに厚生労働省側も上告せず、熊本地裁の判断どおり、3人の勝訴が確定しました。敗訴した2人の原告については高齢であることから、上告を断念していました。
 今回の判決が確定したことは、大きな成果といえます。それは、初めて慢性腎不全の原告が認定されましたが、この原告は、長崎3.8キロ直接被爆という、現在の審査方針では、がんでも認定されない距離。さらに、高血圧性脳出血後遺症(2.5キロ直爆・西山地区)とバセドウ病(甲状腺機能亢進症)由来の甲状腺機能低下症(2.0キロ直爆)の原告が認定され、またも厚労省は「基準」を超えた被爆者の原爆症認定を認めた司法判断に従いました。
 このことは、2016年6月29日に予定されている東京第2次訴訟の地裁判決と2016年7月12日から控訴審の審理がはじまる東京第1次訴訟をはじめ、長崎、広島、大阪、愛知でつづいている訴訟に大きな影響を与えるものと考えられます。

ノーモア・ヒバクシャ訴訟 熊本訴訟原告 2016年4月11日 福岡高裁判決
勝訴原告の勝利が確定
原告 判決 認定病名 性別 被爆時年齢 被爆地 おもな被爆状況
熊本地裁 福岡高裁 直爆距離 入市日と距離 備考
1 勝訴 勝訴
  • 高血圧性脳出血後遺症
7歳 長崎 2.5キロ ―― 西山地区で「黒い雨」浴びる
2 勝訴 勝訴
  • 慢性腎不全
13歳 長崎 3.8キロ ―― ――
3 勝訴 勝訴
  • バセドウ病
  • 甲状腺機能低下症
8カ月 長崎 2.0キロ ―― ――

東京では「上告するな」と行動 厚労省前行動と国会議員要請

 ノーモア・ヒバクシャ熊本訴訟の福岡高裁の判決が言い渡された2016年4月11日の3日後から、熊本県益城町や熊本市などが震度7の大地震に二度も襲われ、その後も余震が続いています。熊本からは自宅が崩壊し避難所で生活している原告の様子や弁護団の中心メンバーの事務所が立ち入り禁止になっている状況などが刻々と伝わってきました。東友会は4月25日が上告期限となるこの判決を確定させることは熊本地震に被災した被爆者の支援だと、4月20日に厚労省前で「上告するな行動」をおこないました。
 この行動には東友会、東京弁護団、原水協などから36人が参加。「熊本高裁判決上告するな」の横断幕を掲げて、大岩孝平代表理事や内藤雅義東京弁護団長などがマイクを握り「高齢被爆者をこれ以上苦しめるな」「日本被団協の『提言』にそって原爆被害の実態にみあった原爆症認定基準に改定せよ」と訴え、熊本の原告、弁護団のメッセージも読み上げられました。
 その後、東友会の大岩代表理事、家島昌志執行理事など6人が国会議員会館に向かい、衆議院の寺田稔議員(自民党)、初鹿明博議員(民進党)、参議院の森本真治議員(民進党)、谷合正明議員(公明党)、小池晃議員(共産党)の執務室を訪ね、判決への声明や新聞報道のコピーを手渡し、厚労省への働きかけと制度の改定についての支援を要請しました。

厚生労働省前の歩道で、「福岡高裁判決上告するな!」と書かれた横幕などを掲げて行動する被爆者たち。横幕は横に並んだ被爆者10人で持っているほど大きいもの。
厚労省前で「上告するな」と訴える被爆者たち