被爆70年の夏に思う――くり返させないために
一般社団法人東友会業務執行理事 山本英典
被爆70年の夏を前に、NPT再検討会議の不一致により、「今年こそ核廃絶への確かな道を」の被爆者の願いはかないませんでした。
せめて唯一の被爆国である日本だけでもという願いも、8月15日の「戦後70年安倍首相談話」で「核兵器の究極的廃絶をめざす」と、究極のかなたに先延ばしされてしまいました。
「70年談話」では、日本国憲法には一言もふれず、憲法の平和主義を「積極的平和主義」にすり替えました。「積極的平和主義」とは軍事力によって平和状態をつくるということで、戦争被害、原爆被害の上にできた憲法9条の精神とは全く異質の「平和」です。
そんな情勢のなかでも、核兵器の廃絶を願う世界の人びとは広島・長崎に結集しました。
広島の平和祈念式典には、例年を上回る5万5000人が集い、外国からも大使が65カ国、国代表が35カ国参加。核保有国からは米、英、仏、露が参加し、アメリカは国務次官が出席しました。
松井一實広島市長は「核兵器廃絶へ、行動するのは今だ」と呼びかけ、満場の熱い拍手をうけました。
長崎でも、6700人が式場を埋め尽くしました。
田上富久市長は、戦争法案について「慎重で真摯な審議を」と要請。被爆者代表として発言した谷口稜曄さんは、「戦争と原爆の生き証人として、被爆の実相を世界中に語り続ける」と発言し、割れるような拍手を受けました。
日本被団協は8月5日に「核兵器のない世界のため 被爆者と市民のつどい」を広島で開催。ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国弁護団は8月8日長崎で全国会議を開き、原爆症認定制度を抜本的に改正させていく方針を確認しました。
戦争する国にしてはいけない――。安保関連法案に反対して何千人もの学生、女性たちがデモをくり返す姿に感動を覚えました。
戦争被害を受忍せよという国の方針とたたかい続けてきた被爆者運動。憲法を守り、核も戦争もない世界へ、なお燃える思いです。