被爆者相談所および法人事務所
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基準改定後の原爆症認定審査のうごき 従来どおりの厳しい却下も

 2013年12月16日、原爆症認定の審査基準が改定されました。厚生労働省の担当者は、ノーモア・ヒバクシャ訴訟に参加している原告全員を2014年1月27日と2月24日の医療分科会で新しい基準で再審査したと話しています。
 その結果、以前の基準で申請を却下されて裁判を起こしていた16人の原告が、判決を待たずに原爆症と認定されました(表参照)。
 がん以外の病気認定された15人の特徴は、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎・肝硬変の基準が「直接被爆2キロ以内」「翌日1キロ以内に入市」とされたためと思われます。

わずかな条件差で認定・却下の違いも

 しかし、その基準をわずかに出ている大阪地裁の原告(ページ下部に掲載の表、下から2人目)が認定されています。大阪訴訟を担当する弁護士は、「3月20日に判決がある原告です。厚労省が敗訴を一人でも少なくするために認定したのでしょう」と話していました。
 大腸がんが認定された1人は、「要医療性」が争点でした。経過観察がつづいていることから、「格段に反対すべき事由がない限り、当該疾病と放射線との関係を原則的に認定する」と基準を変更したことで認定したと考えられます。
 一方で、被爆者健康手帳に広島の「爆心地から2キロメートル」で被爆と記入されているのに、改定後も認定されない原告がいます。東京の原告のなかでは、甲状腺機能低下症で申請している練馬区と八王子市の原告です。
 心筋梗塞とまったく同じ原因で発症し、治療の効果で心筋梗塞の発作を起こす前の状態だと言われる「狭心症」で申請している広島の1.0キロと長崎の1.4キロで被爆している杉並区と北区の原告も認定されていません。半面で、この二人より遠距離で被爆した集団訴訟の原告が判決前に認定されています。2006年7月に認定された広島の1.5キロで被爆した原告です。この原告に厚生労働大臣が交付した認定書の「認定疾病名」は、「狭心症(心筋梗塞相当)」と記載されています。ノーモア・ヒバクシャ訴訟の2人の原告の病状も、深刻な状態であることは、集団訴訟の原告と変わりありません。

被爆者に証明責任課し放射線被害を過小評価

 この厚生労働省の審査結果は、被爆距離や入市した日と入市先の距離を厳密に証明できた被爆者だけを認定するというだけでなく、原爆被害を過小評価し残留放射線の影響を認めない姿勢を変えていないと言わざるを得ません。
 東友会は、このような厚生労働省の姿勢を正すために、東京原告団、弁護団と力を合わせてノーモア・ヒバクシャ訴訟の勝利を求めて運動を広げることを確認しています。

基準の改定で認定されたノーモア・ヒバクシャ訴訟原告(2014年2月28日現在)
認定病名 地裁 原告番号 性別 被爆時年齢 被爆地 直爆距離 入市日・距離
心筋梗塞 広島 11 21 広島 1.3キロ
心筋梗塞 広島 3 5 広島 1.5キロ
心筋梗塞 広島 20 11 広島 1.5キロ 8月8日・1.5キロ
心筋梗塞 東京 10 7 広島 1.7キロ
心筋梗塞 東京 33 4 広島 1.7キロ
心筋梗塞 広島 9 7 広島 1.7キロ
心筋梗塞 広島 10 15 広島 1.7キロ
心筋梗塞 大阪 15 7 広島 2.0キロ
心筋梗塞 大阪 25 15 広島 2.0キロ
心筋梗塞 東京 14 17 長崎 2.0キロ
甲状腺機能低下症 広島 23 5 広島 2.0キロ
甲状腺機能低下症 広島 22 1 広島 3.2キロ 8月7日・0.5キロ
甲状腺機能低下症 広島 26 2 広島 3.3キロ 8月7日・1.0キロ
甲状腺機能低下症 広島 27 1 広島 -- 8月7日・1.0キロ
甲状腺機能低下症・肝機能障害 大阪 26 12 長崎 2.1キロ 8月10日・1.5キロ
大腸がん 東京 27 5 長崎 2.5キロ