原爆症認定の却下事例から 700メートル直爆でも原爆の影響なし?
2012年2月9日、東京北区の大手妙子さんに原爆症認定の却下通知が届きました。大手さんが申請した病名は狭心症、被爆した場所は長崎市の三菱兵器大橋工場、爆心地から700メートルです。大手さんは2010年2月に狭心症発作を起こし、3月に心臓の冠動脈を広げるためにステントを入れる手術を受けました。以後、入退院をくり返しながら治療を受けています。
何のために「新しい審査方針」を作ったのか
東友会の会長でもある北区の被爆者の会(双友会)の飯田マリ子会長は、「心筋梗塞と狭心症の原因は同じで、狭心症を放置すると心筋梗塞になること、ステントの手術を受けている場合は、狭心症が進行している状態だと専門医から聞きました」「大手さんは、700メートルという、生き残ったことが奇蹟と思える場所で被爆した方です。国が自ら改定した認定基準は約3.5キロ以内直接被爆ではないのですか」と話しています。
同じ北区に住む池田智さんも、大手さんと同じ三菱兵器大橋工場で被爆しました。池田さんは、心筋梗塞で出した原爆症認定申請が却下されたため、2006年10月に原爆症認定集団訴訟に参加。この間の相次ぐ集団訴訟の勝利で2008年6月に厚労省の審査基準が広げられ、判決の前に認定されました。池田さんの被爆距離は1.4キロメートルです。
「放射線起因性」の一点で原爆被害を切り捨て
1月27日付けの厚労大臣からの却下通知には、「……疾病・障害認定審査会において(中略)、これまでに得られている医学的知見や経験則に照らし総合的に検討されましたが、当該疾病については、原子爆弾の放射線に起因していると判断することは困難であると判断されました」「上記の意見を受け、貴殿の申請を却下いたします」とありました。大手さんの狭心症は原爆放射線の影響はないので認定できないという「起因性」による却下です。大手さんは語ります。「原爆が落とされたのは、工場の外に出ようとしていたときでした。憲兵さんが通りかかったので、通り過ぎるのを待っていたため、私は生き残りました」「私の皮膚ガンは2005年12月に原爆症と認定されています。同じ人の身体にあらわれたガンは原爆の影響を認めるが、狭心症は原爆の影響はないとする厚労省の機械的な判断は、どうしても納得できません」。大手さんは、東友会が紹介した弁護士に相談して、異議申立を出すための準備をはじめています。
(東友会・村田未知子)