被爆者相談所および法人事務所
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被爆者援護法改正めざす学習会(第2回) 国家補償求めた運動

原爆被害をもたらした国は被害者に償いを
国民的な運動でかちとってきた成果をさらに前進させよう

 猛暑に見舞われた2010年8月16日、現行被爆者援護法を国家補償の法律に改正させることをめざす連続学習講座の第2回講座が平和と労働センター会議室で開かれ、64人が参加しました。
 講師は、日本被団協事務局次長で東友会副会長の山本英典さん。山本さんは冒頭、「国家補償」とは「国がその活動によって国民に対し生じた損失を補償すること」と法律辞書の内容を紹介。戦争を起こし、遂行して原爆被害をもたらし、戦後も放置した国には、被爆者に国家補償をする責務があることを明言しました。

世論と運動が拓いた道

 現在「国家補償」を明記している法律は2つあり、法律の対象は軍人軍属だけだが、その立法趣旨では「戦火に身をさらし、傷病を受けた同胞に対し、国が責任をもって援護に当たることは、洋の東西を問わずまた戦勝国、戦敗国の別なく当然のこと」と述べてあり、被爆者や空襲被害者への援護が必要な趣旨にもなると強調しました。
 1957年の原爆医療法制定当時、政府内で「死没者および爆風による障害者に対する措置を含めるべきとの議論もあったが、予算の制約により限定せざるを得なかった」という厚生省官房総務課作成の内部文書を示し、「人の命よりお金が先行した被爆者対策だった」と述べました。
 国家補償を要求する日本被団協を中心にした運動では、詳細な年表も駆使して、日本被団協結成時からの要求と運動の経過を説明。当時、参議院で国家補償の精神にたった「原爆被爆者援護法」が野党統一案としてまとまり、国との身分関係にとらわれない新しい国家補償法の人類史的意義などが論議され二度も可決されたが、衆議院では自民党の反対で廃案になったこと。被爆50年を前に3点セット(国民署名、自治体意見書、国会議員の賛同署名)の運動の広がりのなかで現行法を制定させた経過を紹介しました。
 現行法には手当の所得制限撤廃など積極面もあるが、放射線被害だけを救済の対象として原爆被害を極めて狭く規定しているなどの問題点があり、そうしたことが原爆症認定裁判が起きた背景にあることにも言及。被爆者と国民の運動がすすむなかで、在外被爆者対策が社会保障の枠を超えて広がるなどの成果が上がったことも説明しました。

被爆者が求める国家補償

 今後要求していく国家補償には、死没者・生存被爆者への個別補償、核兵器廃絶への国の誓いなどを明記させることなどをあげ、国家補償の援護法への改正運動は、核兵器廃絶、「核の傘」からの離脱の要求・運動と同じ軌道にあるとのべました。

 参加者からは、「被爆者に国の謝罪がないこと、氏名までわかっている29万人余の原爆死没者に国の償いがないことに驚いた」という声や、被爆者手帳の対象にならなかった原爆孤児などの遺族は、特別葬祭給付金の対象から外された事例が紹介されました。

並べられた机を埋める参加者たちが、演台からの講演を聞いている。
猛暑日にもかかわらず会場を埋め尽くした参加者
講師の山本英典さん