「黒い雨」訴訟 国が上告断念
勝訴原告への配慮は示しつつも判決の主旨には真っ向から反発
広島高裁が2021年7月14日の判決で原告84人を全員被爆者と認定した広島「黒い雨」訴訟の判決に関し、政府は27日の持ち回り閣議で上告断念を確認。菅義偉首相が談話を発表しました。
首相談話は、高裁判決は容認できないとし、その理由を「今回の判決が過去の裁判例と整合しない点がある」「重大な法律上の問題点があり」「とりわけ『黒い雨』や飲食物の摂取による内部被ばくの健康影響を科学的な線量推計によらず認めるべきとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方とは相容れない」と明言。一方で「原告の皆さまと同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、早急に対応を検討します」としています。
菅首相は、8月6日の広島市平和式典後の記者会見で、すでに原告全員に被爆者健康手帳を交付したと話しました。しかし訴訟に参加しなかった人びとへの対応はもちろん、原告より近距離被爆をした従来の「黒い雨」地域にいた「第1種特例受診者」の扱いには触れませんでした。
さらに長崎市の式典の後の記者会見で首相は、長崎被爆体験者といわれる「第2種特例受診者」の扱いについては、口を閉ざしていました。