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ノーモア・ヒバクシャ訴訟 最高裁が不当判決

制度の解釈に終始した機械的な内容 被爆者援護の理念から目を背けるな

 2020年2月25日、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、原告3人を原爆症と認めない不当判決を言い渡しました。この裁判は、白内障を認定した広島高裁判決、慢性甲状腺炎を認定した名古屋高裁判決を国側が上告。白内障を却下した福岡高裁判決を被爆者側が上告し、3人の被爆者の原爆症認定が争われており、最高裁の判断が注目されていました。
 しかし今回の最高裁判決は、認定要件として「現に医療を要する状態にある」(要医療性)につき、広島高裁判決、名古屋高裁判決が経過観察も「診察にあたる」として要医療性を認めたことを破棄。要医療性を否定した福岡高裁判決を支持した、被爆の実情や被爆者の苦しみを真っ向から否定した内容でした。
 判決直後、弁護士が走り出て「不当判決」の文字が掲げられると、最高裁前で待っていた被爆者・支援者から落胆のため息や憤りの声が上がりました。

原告の内藤さんのとなりには「不当判決」を示す弁護士。それを囲むたくさんのマスコミ関係者。
判決言い渡し後、最高裁の門前で(中央は原告のひとり内藤さん)

怒りの報告集会

 閉廷後、参院議員会館で報告集会がおこなれ、全国からかけつけた被爆者、支援者ら80人(東友会からは32人)が参加。ノーモア・ヒバクシャ訴訟全国原告団、同弁護団、日本被団協の3者共同で「声明」を発表しました。
 新聞・テレビなどの報道陣がカメラを向けて居並ぶなか、弁護団を代表して愛知の樽井直樹弁護士が最高裁判決の緊急分析報告をおこないました。樽井弁護士は、「非常に抽象的な制度解釈に終始し、被爆者援護の理念には触れない判決だ」と述べ、国の責任を追及しない不当判決に屈せず、これからもたたかい続けると強い決意を述べました。
 原告の内藤淑子さん(広島)は、判決を聞き「心が折れた」と心境を述べつつも、被爆者の苦しみを国に伝えるため頑張りたいと、毅然として語りました。
 日本被団協の木戸季市事務局長は、「当初、最高裁は被爆者の声に耳を傾けてくれるという印象を持っていたが、判決は制度の枠組みだけを見て、被爆者の心を見ていない」と述べました。
 かけつけた国会議員からは、森本真治参院議員(国民民主)、本村伸子衆院議員(共産)が挨拶。政治の場で解決できるよう、超党派で取り組んでいきたいと語りました。
 そのほか、弁護士などから発言があり、「認定の制度や要医療性の解釈だけを取り上げている」、「被爆者の苦しみを見ないで行政に追従した内容」と判決を批判。日本被団協が提言している原爆被害の実態にそった原爆症認定制度を求めるとともに、核兵器廃絶と原爆被害への国家補償を求める運動を引き続き広げようと決意を固め合いました。

マイクが何本も置いてある席に座る原告や弁護士たち。一人がマイクを持って話している。
報告集会で発言する原告、弁護士ら
並べられた机は支援者などで埋められている。会場後方にテレビカメラが何台も並んでおり、マスコミ関係者がその周囲にいる。
支援者と報道陣が詰めかけた

厚労省に申し入れ

 最高裁判決のあと、代表団20人が厚生労働省を訪問。「声明」文を手渡し、申し入れをおこないました。
 厚労省側は田中千晶室長補佐らが対応。被爆者側からは、経過観察では「要医療性」を認めない運用を強化し出した理由を聞きたいと迫りましたが、厚労省側はその場では答えず、「あらためて話し合える場を考えたい」と述べるに留まりました。

申し入れする人々と、厚労省職員が対面して席に着いており、申し入れる側の一人が立って申入書を読み上げている。申し入れる側、厚労省側ともに文書に目を落としながら聞いている。
厚労省への申し入れ

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