被爆者相談所および法人事務所
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原爆症認定を被爆の実相・被爆者の実情にかなった制度に

日本被団協は「提言」で抜本改善を要求

 「東友」3月号で、原爆症認定に関する「当面の要求」について紹介したところ、「2.5キロの場所で直接被爆しましたが、証人がいなかったので入市で被爆者手帳を受けました。これでは、がんになっても認定されないのですね」など、様ざまな感想・意見が寄せられました。
 国・厚生労働省の原爆症認定制度のあり方があまりにも被爆の実相、被爆者の実情とかけ離れていているため、その改善を求める運動がありました。
 「当面の要求」は、集団訴訟やノーモア・ヒバクシャ訴訟の司法判断の到達と、高齢化する被爆者の現状をかんがみ、早急にこの水準までは認定基準を拡大することを求める、文字通り当面の要求です。
 一方、日本被団協は、全国の被爆者の声を集め、医師や弁護士などの専門家と協議して、原爆症認定の在り方に対する「提言」をまとめています。これは、現状の原爆症認定制度を、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の立法の趣旨にそって、抜本的に改革することを求めたものです。
 厚労省の認定審査を前提にした内容ではなく、被爆者手帳の交付を受けた全員に、現在3万円程度の「健康管理手当」と同額の「被爆者手当」を支給し、その被爆者の身体の状態に応じて3段階にわけて手当を加算すべきだと要求するものです。
 加算の「区分1」は、原爆症と認定された病気が治った場合に受けられる現在の「特別手当」相当の5万円程度、「区分2」は9万円程度、「区分3」は現在の「医療特別手当」相当の14万円程度にすることを提案しています。

日本被団協の「提言」

 日本被団協の「提言」の骨子は2点です。

  1. 現行の原爆症認定制度(認定審査をおこなうこと)を廃止し、すべての被爆者(「被爆者健康手帳」所持者)に「被爆者手当」を支給すること。
  2. 現在も放射線の影響が未解明であることから、被爆距離などの被爆状況で区別せず、放射線の影響が認められた病気の度合いに応じて3種類に区分して手当を加算すること。

 この案は、生命にかかわる病気と、白内障など手術で治る病気を区分し、病気の重さ(重篤度)に応じて手当額を変えるという、被爆者の実情と社会通念のバランスがとれた合理的な提案です。

【対象とする疾病の範囲】

  • 放射線の影響が認められているすべてのがん、白血病など
  • 心筋梗塞、狭心症、甲状腺機能障害、肝機能障害、白内障、子宮筋腫など
  • 熱傷瘢痕(ケロイド)、免疫力低下などで重症化した外傷など
    ただし、熱傷瘢痕(ケロイド)の場合は、瘢痕の部位、度合いなどにより「区分2」あるいは「区分1」

病気の重さ(重篤度)による区分と手当額の案

区分 病気の例 手当額
(病気の重さに応じ増額)
被爆者手当 被爆者(手帳所持者)すべてに支給

現行の「健康管理手当」相当:3万円程度

区分1 がん(治癒)、白内障(手術後)、循環器疾患、糖尿病、甲状腺機能障害、貧血など 現行の「特別手当」相当:5万円程度
区分2 がん(内視鏡手術、重い副作用を伴わない投薬中)、狭心症などの心疾患、慢性肝炎など 9万円程度
区分3 がん・白血病(放射線治療中、抗がん剤投与中)など、心筋梗塞、脳梗塞(重度)、肝硬変など 現行の「医療特別手当」相当:14万円程度