アメリカの臨界前核実験に抗議する
東友会は2018年10月12日、アメリカがおこなった臨界前核実験に対し、次のような抗議文をドナルド・トランプ大統領宛に米大使館経由で送りました。
アメリカの臨界前核実験に抗議する
昨日、貴国が2017年12月にネバダ州の地下核実験場で「ベガ」と命名された臨界前核実験を実施していたことが報道されました。
貴国は2018年2月、「核態勢の見直し(NPR)」で「使える核兵器」の開発をめざす計画を明らかにしました。今回の核実験は、この構想を推進するものに他ならず、核兵器廃絶を願う国際世論に逆行するものだと、私たちは考えます。
私たち原爆被爆者は、73年前の広島・長崎で、貴国が投下した核兵器によって家族を失い、自らも傷つけられ、放射線による後障害や差別、偏見によって人生を変えられながらも、必死で生きてきました。いま、私たちの平均年齢は82歳を超えました。
しかし私たちは、「これ以上、世界のどこにも被爆者を生み出してはならない」と、「核なき世界」の実現を願い、世界に訴え続けてきました。それだけに、2017年7月、国連で「核兵器禁止条約」が採択されたこと、この批准国がすでに19カ国になったことを、「闇夜に明かりが見えた」との思いで受け止めています。
核実験の発表があったまさにその時、私たち被爆者の代表がニューヨークの国連本部を訪問し、核兵器禁止条約の推進を願う署名が累計で830万人分集まっていることを報告しています。
しかし貴国は、この条約の採択に賛成せず、それどころか、条約を批准しないようにと、賛成国に圧力を掛けているとの報道を聞き、私たちは深い悲しみとともに怒りを覚えてきました。
核兵器は、いったん使用されれば、規模の大小にかかわらず、人間と自然界に多大な殺戮と被害を及ぼします。これは、広島・長崎での被爆状況を見れば明らかです。
私たちは、人類史最初の核戦争を体験した者の使命として、貴国に要求します。
新たな核開発・核実験をいますぐ中止するとともに、核兵器をただちに廃絶してください。
「自国は核兵器を持ち続け、実験もたびかさねて実施する。しかし他国には実験も、保有も許さない」という、自国中心の独善的で威圧的な態度を改め、国際協調の立場に立ってください。