夏、実相普及のとりくみ各地で 原爆展や被爆証言など多彩
被爆66年目の2011年夏も、原爆展・平和展の開催、証言活動など多彩な実相普及がとりくまれました。とくに東日本大震災と東電福島第一原発事故の影響により広範囲で節電が実施されるなか、会場条件や暑さとたたかいながらも高齢の被爆者が奮闘しました。2011年の特徴に着目しながら、寄せられた報告を紹介します。(要約・文責:編集部)
原発事故
福島第一原発事故の影響で、例年に増して放射線に対する関心が高かったことが特徴です。同時に、放射線被害という点では原爆と原発の共通点もありますが、同時に両者の違いに対する理解を深めることも重要な課題になってきています。
足立
足友会が主催し、区と教育委員会が後援する「原爆・平和・戦争を考える展示会」は2011年で9回目。8月9日から11日まで足立区役所1階ロビーで開きました。原発事故を契機に広島・長崎への関心は高まっており、初日の模様が東京MXテレビのニュースで報じられたこともあり、3日間通じて多くの区民が参加。「核兵器は廃絶すべきです。今回の原発事故は放射能のおそろしさを日常の生活でも分かるものにしました」など140通の感想が寄せられました。(藤沢汎子)
小金井
実行委員会を作って協議を重ね、福島原発事故と沖縄の米軍基地の問題にとりくむことを確認。7月16、17の2日間、「第16回こがねい平和展」を開催しました。
16日は、柳田秀一さん(原発問題住民運動全国連絡センター事務局長)による「原発問題の実態とその背景について」の講演があり、17日には「原子力の専門家が原発に反対するわけ」という京都大学原子炉実験所助教のDVDを上映しました。(泉順太郎)
日野
第4回原爆と人間展と被爆体験を聞く会が8月1、2の両日、市職員労組などが主催して日野市役所会議室で開催され、原爆と原発の違いについて質問や意見を求められました。
福島原発事故で漏出した放射性物質を熱量で計算すると広島原爆の約30個分に相当するという話もありますが、原爆は熱線・爆風・放射線の複合的な威力で人間を無差別に殺傷するのが目的の兵器であったことを説明しました。(片山曻)
三鷹
三鷹市が毎年8月15日に開催している平和祈念式典で三友会は、毎回15分間、広島・長崎の被爆体験を証言しています。
2011年は、放射化学の著名な研究者である佐野博敏さんが、自分と母親の被爆体験を福島第一原発事故と関連させて証言。佐野さんは、広島の富士見町で直爆を受けた母親は、急性症状からみて福島原発内の高濃度汚染地域に数時間いたと同等の被曝をしたと推定。原子野の地獄絵図の様子も克明に証言し、市長や都議会議員・市議会議員、市民や市内の小中学生に深い感銘を与えました。(山本英典)
地域の協力
自治体や他団体との協力が積極的にすすめられています。東友会・地区の会が長年重視してきた自治体との協力関係、草の根の市民との交流・連帯が活かされています。地区によっては広く戦争被害の視点からの展示もあります。
世田谷
「ピースアクション世田谷2011実行委員会」主催の恒例の催しに参加。この運動は、世田谷同友会の訴えに賛同した個人・団体が集まって始まったもの。9年前からは毎夏、被爆体験を語り継ぎ、反戦・反核を訴える催しをおこなっています。8月8日から11日まで、世田谷区役所ピロティで「原爆写真展・被爆者のお話」。保坂展人区長からは「『平和都市宣言』をした平和を願う世田谷区民とともに、恒久平和の実現向けてがんばりましょう」と挨拶がありました。(大国晃子)
中野
毎夏、中野区は区内の要所で長崎・広島の原爆写真展を開催しています。2011年は中野駅ガード下展示場、区役所ロビーなど4カ所で合計6週間展示されました。
このうち区役所ロビー展と平和資料室展示では、中野長広会役員が分担してボランティアガイドを務めました。2011年は福島原発事故の影響もあってか区民の関心も高く、とくに区役所ロビー展においては連日100人以上の参観がありました。(森正幸)
展示の工夫
展示物の工夫にも知恵が凝らされています。原爆の写真は数が限られ新しいものを追加するのは困難ですが、国連原爆展で使ったパネルや原寸大の原爆模型、子ども向けの「サダコと折鶴」の展示物、DVDの上映などさまざまに工夫されています。
八王子
毎年、市が各団体・市民に呼びかけて実行委員会を作り、平和展をおこなっています。2011年は8月3日から7日。小・中学生が描いた平和ポスター、八王子空襲、原爆、国連の平和活動などを展示。講演・証言・紙芝居・ビデオの上映も。八六九会は「原爆と人間展」、「サダコと折鶴」、中国新聞労組が作った8月6日の新聞などを展示。1時間半ずつ4回、延べ7人が被爆証言。大勢の小・中学生が熱心に見学し質問してくれました。(伊藤雅浩)
墨田
墨田折鶴会は8月16日から19日の4日間、墨田区役所リバーサイドホールで「第16回平和・原爆写真展」を開催。広島型原爆リトルボーイの原寸大模型をはじめ、広島・長崎の原爆と東京大空襲など、戦争の事実を記録した写真や絵画など約400点が展示されました。
夏休みで親子連れが多く、お母さんの説明に熱心に聞き入っている子どもの姿が目立ちました。「この1年間に折ったものです」と約1000羽の折り鶴を持参した人もおられました。(湊武)
武蔵野
武蔵野けやき会は8月1日から21日まで、恒例の原爆パネル展を開催。前半は市役所ロビー、後半はJR武蔵境駅前に新しくできた図書館の一室でした。人目を引いたのは国連原爆展で使用されたパネル。毎年訪れてくれる人も釘付けになっていたようです。図書館では、子どもたちが折り鶴を折ったり、紙にメッセージを書いて貼りつけたり、連日家族連れで賑わいました。(梅岡功)
被爆証言活動
パネルや現物資料の展示と並行して、積極的な証言活動がおこなわれています。被爆者のなかにも「あと何年語れるか」という思いがあり、猛暑のなか、病躯をおして生の言葉で伝えることに力をそそいでいる姿がうかがえます。
品川
非核平和都市宣言25周年を記念し区が主催した被爆者と空襲体験者の座談会が開かれました。品川友の会の長久勝之は、被爆体験と現在の闘病生活を語り、原爆被害をもたらした「戦争は二度と起こしてはいけない」と結びました。空襲体験者も「戦争は誰も得することはない」と非戦を貫くことの大切さを訴えました。(長久勝之)
杉並
7月から8月にかけて、杉並光友会の会員は各地で証言活動に参加しました。7月8日、区立西宮中学校で広島への修学旅行を予定している中学生に、山中武子さん、芳賀順子さん、塚本美知子さんの3人が証言。12日、東京大学教養学部の岡田晃枝准教授の軍縮ゼミでは籾倉積が証言。31日、渋谷原爆写真展の催しでは梅園義胤さんが自身の体験を語りました。
8月6日、日本橋アークネス・アートギャラリーでの催しでは尾崎守夫さんが証言。同日、神保町の救世軍キリスト教会でおこなわれたイベントでは塚本さんが証言しました。(籾倉積)