被爆者相談所および法人事務所
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東友会相談事業の2023年度実績 被爆者数は減っても相談件数は横ばい

 2023年度(2023年4月から2024年3月)における東友会原爆被爆者相談所への相談実績がまとまりました。年間の相談件数は1万1771件で、前年度から420件の減少となっています。
 相談件数が最も多かった2011年度の2万0061件からは被爆者数の減少などもあり、相談件数も年々減少傾向でしたが、この3年間は横ばいとなっています。
 2020年4月以降コロナ禍の影響で来所面談や相談会での相談が大幅に減少しましたが、規制緩和後は来所面談、出張相談会の開催数も回復しつつあります。
 年ごとの被爆者数の減少はグラフおよびスクリーンリーダー用の表のとおりで、この傾向は今後も顕著に続くと考えられます。

【補足説明】2024年4月中旬の時点では、2023年度末(2024年3月末)の被爆者・被爆二世の数はまだ公表されていませんので、グラフもありません。一方、2023年度(2023年4月から2024年3月まで)の相談件数はまとまりましたので、過去10年間の推移に反映させました。
以下は、スクリーンリーダー用にグラフを表になおしたものです。
東友会原爆被爆者相談所相談件数と、東京都に登録されている被爆者・被爆二世の人数の10年間の推移
年度 相談件数 相談件数のうち二世に関する相談の件数 被爆者数 被爆二世数
2014年度 17,574 2,664 6,010 7,217
2015年度 16,774 2,912 5,758 7,458
2016年度 15,070 2,870 5,487 7,673
2017年度 15,820 3,278 5,203 7,936
2018年度 15,344 3,472 4,921 8,130
2019年度 15,593 3,358 4,691 8,231
2020年度 14,179 2,964 4,402 8,370
2021年度 11,694 2,881 4,087 8,553
2022年度 12,191 3,015 3,838 8,664
2023年度 11,771 2,962 未発表 未発表

相談内容の傾向

 総論的には、「被爆者援護法関係」の相談件数が減少しています。これは、新規の手帳取得や手当申請などに関わるもので、被爆者の高齢化や人数減少による影響と思われます。
 しかし、更新の必要な手当などの相談は引き続きあり、被爆者本人の高齢化に比例するかのように、一人の被爆者から何度も同じ相談がくり返されるなど、根気よく向き合わなければならないケースが増えています。
 介護に関する相談は相変わらずたくさんあります。「昨日まで元気だったのに突然入院となり、介護が必要と言われた。『被爆者の制度』があるとは聞いていたけれども、どうしたらよいのかまったくわからない」という家族からの相談も少なくないため、いちから説明して理解してもらわなければならない事例が多々あります。
 高齢夫婦の老々介護、高齢単身者も年々増加してきており、被爆二世を含む別居家族、病院の医師やケアマネジャーなどとの連携やその後の支援も、相談業務の重要な課題となっています。

癒えぬ原爆の傷

 被爆者からの相談では、「これまで誰にも話さないできました」と被爆時の凄惨な記憶、家族のつらい思い出、その後受けたいわれなき差別、原因不明で続く体調不良など、長年の思いを涙ながらに語る人も少なくありません。
 制度の手続き説明などにとどまらない、心身にわたる原爆被害の深刻さに向き合う相談活動が求められます。

被爆二世の現状

 被爆二世の相談は2015年度以降、年3000件前後を維持していますが、新規の相談が増えています。これは、東京都に登録する被爆二世の増加が背景にあると考えられます。上記のような被爆者の状況に比べれば、一度東京都の被爆二世施策を理解すると、くり返しの相談は少ない、という事情が考えられます。
 しかし、被爆二世も平均年齢60.52歳(2023年3月末現在)、最高齢77歳となり、健康や医療、介護の問題での不安や助成を求める人が急増しており、被爆二世本人や家族から、「退職して健康診断を受けるところがなくなり、健康診断受診票を申請したい」「いろいろ病気が出てきた」という相談が続けざまに寄せられています。
 被爆者の場合と同様に、「自分の体調が悪いのは親が被爆しているからなのでしょうか」と不安を訴える相談も少なくありません。現在の時点で、親の被爆が子どもにどのように影響するのか明確な判断は示されていません。しかし、被爆者の子へ影響が出るかもしれないという不安は被爆者そしてその子どもや家族にとって払拭することはできません。

制度の維持と活用を

 全国水準と比べると、東京都は被爆者援護条例に「被爆者の子」(被爆二世)が位置づけられてるため、他の道府県よりは充実した援護施策が実施されていますが、逆に東京都独自の施策・制度であるため一般に知られていないということもあります。
 親世代の被爆者が懸命の運動で勝ち取ったのが都条例です。東京都における被爆者と被爆二世の制度・施策を活かせるよう、被爆者、被爆二世、家族に寄り添い続ける相談事業活動が強く求められています。