被爆者相談所および法人事務所
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ノーモア・ヒバクシャ東京1次訴訟 高裁で原告全員勝訴の完全勝利

放射線起因性を幅広く肯定、入市などの残留放射線も重視
原爆被害の実情に寄り添った東京高裁判決

 2018年3月27日、東京高等裁判所(後藤博裁判長)は、厚生労働省が地裁の勝訴判決を不服として控訴した6人の原告全員に厚生労働大臣の却下処分を違法とする勝訴判決を言い渡しました。
 その後、厚労省は4月10日に上告を断念。これで第1次訴訟に参加した原告21人全員の疾病が原爆症と認定されるという「完全勝訴」となりました。
 厚労省は2013年12月に改定した新基準で原告全員を再審査し、4人を認定。残った17人については東京地裁が2015年10月に全員勝訴の判決を言い渡していました。

2018年3月27日東京第1次訴訟控訴審判決の原告6人
原告 地裁判決
(判決日)
高裁判決
(判決日)
申請病名 性別 被爆地 被爆状況
直爆距離
(キロメートル)
入市日
1 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 下咽頭がん 広島 ―― 8月11日爆心地から約500メートルへ
2 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 心筋梗塞 長崎 3.5 8月10日爆心地付近を通り長崎医科大学へ
3 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 心筋梗塞 広島 2.5 ――
4 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 脳梗塞 長崎 1.5 直後2.2キロメートルの自宅に戻る。10日以降爆心地付近通過
5 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 甲状腺機能低下症
ただし甲状腺機能亢進症由来
長崎 2.3 爆心地から約1.6キロメートルで1カ月生活
6 勝訴(2015年10月29日) 勝訴(2018年3月27日) 脳梗塞 長崎 3.7 8月15日から9月頃稲佐橋から北1キロメートル付近
【備考】
  • ノーモア・ヒバクシャ東京第1次訴訟は、2015年10月29日に東京地裁判決で原告17人全員が勝訴。このうち上記の6人を国が控訴したため、東京高裁で争われていました。
  • 「原告6」は2015年5月10日に死去、訴訟は継承。

異例の判決言い渡し

 判決の言い渡しは通常、裁判長が主文だけを読み上げて終了するところ、本訴訟では裁判長が10分近くかけて判決要旨をすべて読み上げました。これは、被爆者の心情に深く寄り添ったものであり、長崎原爆松谷訴訟の最高裁判決以降の地裁の判決を踏襲した判決となりました。
 判決は、国が原爆放射線以外の原因によると主張する疾病について、原爆放射線によってその疾病が促進されると認められる場合には、特段の事情がなければ放射線起因性が否定されることはなく、放射線起因性を肯定することが相当であるとしました。
 また、厚労省が原爆症認定の根拠としている放射線被爆線量は、あくまでも一定の目安と止めるのが相当であるとし、被爆者の被爆後の行動など残留放射線による外部被曝や内部被曝の特殊性を念頭に置くことが重要であるとしています。
 東京高裁前には被爆者や支援者が待ち受け、弁護士と被爆二世が「全員勝訴」の垂れ幕を掲げると、喜びの歓声を上げました。

「全員勝訴」「原爆症認定制度 抜本的に改善せよ!」「国は核兵器廃絶の先頭に立て!」のそれぞれの垂れ幕を持った人が、被爆者とともに、スピーカーを載せた車の前に立っている。マイクを持って話している人がそのわきにいる。
東京高裁前で「全員勝訴」を喜び合う原告、弁護団、支援者たち

判決の内容などを報告

 その後、会場を参議院議員会館会議室に移しての報告集会では、原告のなかで、ただ一人判決を聞くことができた坂本治子さんが頬を紅潮させて「みなさんの支援で勝つことができました。これが被爆者全体の制度の改定につながってほしい」とのべ、弁護団から判決の内容、今後厚労省に求めていく原爆症認定の基準についての報告や説明がありました。
 さらに、日本被団協、東京原水協と被爆二世など支援者からは、たたかいの激励と勝利判決に対する喜びの声が寄せられました。

会議室内に並べられた机に着席する参加者。会場前方には弁護士や原告などが座っている机があり、弁護士のひとりがマイクを持って報告している。
完全勝利に沸いた報告集会

厚労省に強く申し入れ

 翌28日、原告団、東友会、日本被団協、東京弁護団の代表15人が厚労省に、2018年になって続いている高裁の判決を生かした制度の改定と「上告するな」と申し入れをしましたが、厚労省側は今回も「聞き置く」というだけの対応に終始。結局、上告期限の4月10日に「上告断念」を公表しました。

厚労省内の一室で、対面した席に着く被爆者側代表、弁護団と厚労省側代表。
判決の翌日には厚労省へ要請