英国各地で被爆証言活動 「ヒバクシャ国際署名」への賛同広がる
子どもらに負の遺産は残さない 核兵器禁止条約の早期実現を
国連ではじまる「核兵器禁止条約」の交渉会議に合わせて、イギリスの核軍縮団体・CND(核軍縮キャンペーン)が英国内の世論に働きかけるため被爆者遊説を企画。派遣要請に応えて、2017年3月26日から4月3日まで、東友会は山田玲子さん(被爆者、執行理事)と山田みどりさん(被爆二世、事務局員)を派遣しました。その手記を紹介します。
ニューヨークの国連本部で「核兵器禁止条約」の交渉会議がまさに始まろうとしている前日3月26日、私たち二人は、たくさんの署名用紙とメッセージを携えてイギリスへ向けて羽田を発ちました。
ほぼ予定どおり同日16時にロンドン・ヒースロー空港に到着した私たちを、キャロル・ターナーさん(ロンドンCND議長)とシゲオさん(通訳者・ロンドンCND執行委員)が出迎えてくれました。そのままブルース・ケントさん(イギリスCND副会長)宅を訪れ、ご夫人心づくしの手作りの夕食。アットホームな歓迎に、旅の疲れもとれました。
フル稼働の毎日
ところが、翌日は朝7時20分出発、8時30分からの学校集会での証言活動にはじまり、午前、午後、夜と、ぎっしり詰まった日程が組まれていました。ロンドン、スコットランド、マンチェスター、オールダム、オックスフォード、そして再びロンドンへ戻ってくるまで、連日続きました。
市民から政治家まで
CND主催の集会はどこも会場いっぱいで熱気あふれていました。マンチェスターでは入場整理券が直ぐに売り切れたそうで、同じ場所で翌日も開催されました。参加者の皆さんが真剣に私たちの話に聞き入り、話し終わるとすぐに質問が飛び出すのです。フクシマのことや「憲法9条」のことも心配していました。その熱意に応えたいと私たちも精いっぱい頑張りました。逆に元気をもらいました。
スコットランドのニコラ首相から「ヒバクシャ国際署名」にサインをいただいたときには、感激でそれまでの疲れもふっ飛んでしまいました。その後もマンチェスター副市長、オールダム市長から署名をいただきました。
核兵器のない世界を子らに
トライデント潜水艦が配備されているクライド海軍基地のそばに設けられたファスレーン平和キャンプでは、テントや手作りの小屋で監視活動をしている若者たちが歓迎してくれました。そこには1985年に被爆者が訪問した際に植えたという桜の木が大切に育てられていました。マンチェスターでは今、ヒロシマ被爆樹イチョウの種から苗を育てており、その苗を市内の学校に植える事業計画だそうです。
子どもたちとの触れ合いも心に残りました。早朝に集まってくれたロンドンの女子中高生、マンチェスターでは列車のアクシデントで1時間も遅れた私たちを待ち受けてくれた小学生たち、お父さんといっしょにイチョウの苗を育てている植物園を案内してくれた女の子たちです。私たちが話し終わるとすぐに手が上がり、先入観のない素朴な質問をしてきました。世界中の子どもたちに「核兵器」という負の遺産は残してはならないとの思いをあらたにしました。
この旅の経験を通じて「核兵器禁止条約」への期待が多くの人から寄せられていることを実感しました。その思いが私たち被爆者、被爆二世の証言を聞いたことでより確かなものとなり、「核兵器廃絶」が実現することを願っています。(山田みどり)