欧州各国で被爆証言と交流 東友会から2人を派遣
東友会は2015年10月4日から14日、ヨーロッパへの被爆者遊説に、山田玲子執行理事と家島昌志執行理事を派遣しました。この遊説活動は、国際平和ビューロー(IPB)の被爆70年記念事業への協力要請を受けた日本原水協が、「ヒバクシャ遊説 in ヨーロッパ」を企画し、被爆者の派遣を依頼したものです。山田さんは「フィンランド・スウェーデン」コース、家島さんは「スペイン・フランス・イギリス」コースに参加しました。ふたりの報告を紹介します。
北欧の人びとの静かな熱意 山田玲子
私は、北欧のフィンランドとスウェーデンで自分の被爆体験を話し、核兵器廃絶にむけた被爆者の願いと、長年にわたる被爆者運動を伝えてきました。
ヘルシンキでは、国が売りに出した古い木造駅舎を、平和連盟加入の団体が購入して平和運動の拠点としている「平和駅」で交流会がありました。おりしも反原発運動中で、斉藤紀医師の福島原発事故の報告に白熱した討論が続き、翌日訪問した放射線安全局との懇談会も同じでした。
学校訪問では、徴兵を拒否した青年たちの学校で午前と午後の2回証言をしました。
スウェーデンでは、国がNATOに加入するのではという危機感をもって抗議活動をしている平和団体との交流会で、日本の憲法と安保関連法について質問がありました。
学校訪問では、移民を受け入れている中学校、中等教育を受けられなかった学生を教育する学校、国連クラブ加入高校の3校で証言。どこでも学生たちは、被爆体験に強く心を動かされた様子で、涙を流しながら「ありがとう。決して忘れません」と気持ちを伝えてくれました。
常に細やかな心配りをしてくださった各国の平和団体の方々に接して、情熱を秘めながら、たいへん静かで穏やかな北欧の人々の民族性を知り得た思いでした。
草の根の願いはどこも同じ 家島昌志
私は2015年10月4日から14日までスペイン、フランス、イギリスと回りました。被爆者は私と千葉の木村邦子さんの2人、日本原水協のみなさん6人の一行でした。
市民の平和団体や小学校の生徒、そしてスペイン国会やイギリス国会で国会議員に対してまで被爆証言ができたことは、関係者の努力もさることながら、実に画期的なことでした。期間の半分ほどは各国のマスコミの取材に応じました。
NATOの「核の傘」に安住するスペイン、自ら核兵器を保有してその抑止力を是認するフランスやイギリス――それぞれに国家・政府の立場は異なりますが、各国で草の根活動を続けている平和団体や労働組合のみなさんは、熱心に私たちの話を聞いてくれました。
フランスの小学生200人を前に証言をしたあと、子どもたちが熱心に手を挙げて質問してくれた時には、この春にニューヨークの小学校を訪問したときの光景を思い起こさせてくれ、未来の希望を垣間見た気持ちになりました。
1970年代後半から80年代半ばには、ヨーロッパへの被爆者遊説がおこなわれていましたが、近年まとまった遊説はなかったので、よい機会になったと思います。
ヨーロッパ派遣を後押ししてくださったみなさん、各国の平和団体のみなさんに深く感謝申し上げます。