被爆者相談所および法人事務所
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都議会各会派のヒアリング(聴き取り) 東友会の要請に前向きの対応

 東京都の2021年度予算に対して、2020年も東友会は都議会5会派に、被爆者と被爆二世の援護施策と東京都の平和施策の充実について要望しました。
 要請の内容は、7月に福祉保健局に要望したことのうち都の財政負担が伴うもの。東友会の相談事業への財政的支援、被爆者と被爆二世の健康診断の充実、二世に関するデータの公表、被爆体験の保存などについてです。コロナ禍の中での参加者を絞った要請になりましたが、家島昌志代表理事などが各会派の都議と親しく懇談しました。

公明党

 都議会公明党のヒアリングは、8月25日に都議会で開かれ、25分間の要請懇談になりました。公明党からは、都議会副議長の重責を務め長年東友会に理解をしめしている藤井一都議(大田区選出)、幹事長代行・谷村孝彦都議(北多摩1区選出)、上野一彦都議(江戸川区選出)、慶野信一都議(荒川区選出)、小林けんじ都議(練馬区選出)が参加。東友会からは家島代表理事の他に、石飛公也、湊武、村田未知子執行理事、山田玲子理事がそれぞれに要望内容を説明しました。
 藤井都議は4月に白血病で亡くなった被爆者への思いについても語り、二世の医療費助成について障害ごとの分類データを都が出すよう要望すると約束しました。

対面する形で、距離を十分にとって並べられた長机に、各一人ずつ着席し面談する東友会代表と都議会公明党。
都議会公明党への要請

都民ファースト

 9月1日に東友会は、都民ファースト都議団と都議会民主党・民主クラブに要請。公明党に要請した5人とともに、大岩孝平理事(東京都原爆被害者協議会名誉会長)も参加しました。
 都民ファーストへの要請懇談は30分間。副総務会長・鳥居こうすけ都議(杉並区選出)、都議会厚生委員の木下ふみこ都議(板橋区選出)、たきぐち学都議(荒川区選出)、岡本こうき都議(北多摩2区選出)、山田ひろし都議(三鷹市選出)など9人の都議が参加。
 山田都議から東友会の相談事業の内容と傾向について質問が出され、会派として東友会への支援を約束しました。

対面する形で、距離を十分にとって並べられた長机に、各一人ずつ着席し面談する東友会代表と都民ファースト。
都民ファーストへの要請

民主党・民主クラブ

 民主党・民主クラブは、幹事長の中村ひろし都議(三鷹市選出)をはじめ、藤井とものり都議(練馬区選出)、宮瀬英治都議(板橋区選出)、山口拓都議(世田谷区選出)が参加しました。20分間という枠でしたが、戦争体験の保存は今後10年がくくりとなる重要な問題なので、都の窓口一本化について知事への働きかけを続けるとの話がありました。

対面する形で、距離を十分にとって並べられた長机に、各一人ずつ着席し面談する東友会代表と民主党・民主クラブ。
民主党・民主クラブへの要請

共産党

 共産党都議団への要請懇談は9月8日に、50分間おこなわれ、被爆者・被爆二世対策から平和・核兵器廃絶問題にまで話題が拡がり、東友会の要望に全面的に協力するとの回答がありました。幹事長の和泉なおみ都議(被爆二世・葛飾区選出)、河野ゆりえ都議(江戸川区選出)、厚生委員の藤田りょうこ都議(大田区選出)が参加。東友会からは公明党に要請した5人とともに、濱住治郎執行理事、中川夏代理事、森貞士会員も参加しました。

対面する形で、距離を十分にとって並べられた長机に、各一人ずつ着席し面談する東友会代表と共産党都議団。
共産党都議団への要請

自民党

 都議会自民党からは近年、文書での要請のみを受けるとされています。2020年も9月1日に家島代表理事などが都議会自民党政調会を訪ね、要望書を手渡しました。

東京都の次年度予算に対する要望(要旨)

 都議会各会派のヒアリングで東友会が要請した内容(要旨)は次のとおりです。

1.東友会への被爆者健康指導事業委託費について

 東友会への相談は、高齢被爆者とその家族から寄せられています。このため、家族や被爆二世などにも被爆者施策を知ってもらうことが重要だと考え、委託刊行物や独自の資料を無料で配付しています。
 東友会のこれらの事業については、1984(昭和59)年8月28日に開催された都議会衛生労働経済委員会などでの審議以降、党派を超えたご理解とご支援をいただき、都議会の改選のたびに、被爆者健康指導事業委託費を「実態にみあって支給」すべきとの請願が、全会派一致で趣旨採択されてきました。
 委託事業費について以下の点を要望します。
(1)貴会派として、削減前にもどす予算要望を提出していただきたいこと。
(2)高齢被爆者を対象にした東友会の相談事業の水準が保たれるよう、ご配慮いただきたいこと。

2.被爆者健康診断について

 都道府県として唯一「被爆者援護条例」を持つ東京都が、条例の精神を生かし、全国に先駆けて疾病を発見する可能性のある前立腺がんのPSA検査や超音波検査を追加し、高齢被爆者の不安に応えるよう、ぜひ、貴会派が要望していただきたく、以下の点について要望します。

がん検診について

  1. 男性被爆者に、前立腺がんのPSA検査を実施していただきたいこと。
  2. 肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓・子宮・卵巣・前立腺等の腹部の実質臓器を被曝することなく評価できる腹部超音波検査を追加していただきたいこと。
  3. 乳がん検診、子宮がん検診を各区市に1カ所以上に増やしていただきたいこと。
  4. 胃内視鏡(ファイバースコープ)を実施する指定病院を増やしていただきたこと。

甲状腺機能に関する検査について

  1. 東京都として、被爆者健康診断に、甲状腺機能に関する検査を追加していただきたいこと。
  2. 上記について、東京都として厚生労働省に働きかけていただきたいこと。

3.「被爆者の子」の健康診断と医療費助成制度について

 近年、東友会が受けた被爆二世の制度に関する相談は年間3000件程度を推移しています。最高齢者が74歳となった被爆二世のなかで、がん・白血病などの悪性新生物をはじめ、循環器機能障害や脳血管障害、がん、運動器機能障害の治療を受けている者は少なくありません。
 つきましては、東友会として以下の点を要望します。

被爆二世(「被爆者の子」)のがん検診について

  1. 被爆者のがん検診に追加されている胃カメラによる検診を、東京都として被爆二世にも早急に追加していただきたいこと。
  2. 被爆二世の健康診断、がん検診は、本年度と同様にすべて被爆者健康診断と同様の実施時期、実施内容としていただきたいこと。
  3. 医療機関でのポスター掲示、東京都公報、インターネットなどを使って、被爆二世の諸制度についての啓蒙につとめていただきたいこと。
  4. 多発性骨髄腫以外の被爆二世のがん検診の実施と、東京都が実施している医療費助成を国がおこなうよう、東京都として厚生労働省に働きかけていただきたいこと。

被爆二世(「被爆者の子」)の健診結果について

  1. 東京都は「プライバシーへの配慮から(検診)結果の提出を求めていない」とし、被爆二世の健診結果の集計をしていないと聞いています。東京都が実施している被爆二世の一般健診、がん検診の検査結果を医療機関から氏名などが特定できないよう提出させ、その集計を公表するよう、貴会派が要望していただきたいこと。
  2. 東京都から被爆二世の「医療券」の交付を受けている医療費助成の区分内容について、障害別、年代別に整理した資料を公表するよう、貴会派が要望していただきたいこと。

4.東京在住被爆者の被爆体験の継承について

 被爆から75年となった2020年、被爆当時の実相をみずからの記憶で証言できる被爆者は80歳代後半の者になり、減少の一途をたどっています。さらに、最高時は48カ所にあった都内各区市町村の被爆者の会のうち24カ所が休会するなどの影響もあり、これまで都内各地で発行された被爆者の貴重な証言が、散逸しはじめています。
 東京都は「予算化していない」と回答していますが、事態は逼迫しています。「被爆者援護条例」を持つ唯一の都道府県である東京都が、また「唯一の戦争被爆国」の首都である国際都市・東京都が、核戦争被害の実態を伝え広げる役割を果たしてくださるよう、以下の点について要望します。

  1. 東京都の平和事業の窓口を一本化し、戦争被害の実態を後世に残す事業をすすめるよう関係部局にご提案していただきたいこと。
  2. 東友会をはじめ都内の被爆者の会や都民である被爆者が発行した被爆体験記や被爆資料を東京都として収集し、都庁、都立図書館、小中高校、大学で有効に活用されるよう検討を始めていただきたいこと。
  3. 東京都として、被爆証言DVDの制作、保存、貸出しを企画していただきたいこと。