原爆症の認定申請 放射線起因性と要医療性の2つが必要
原爆症認定の「審査方針」の内容を改めてお知らせします。認定される条件は「放射線起因性」と「要医療性」の2つがあります。
1 放射線起因性
申請する病気の原因が原爆放射線の影響によるかどうかの判断のことです。
放射線起因性の審査で「積極認定」とされる被爆状況と病名はページ下部「1.『放射線起因性』の要件」のとおりです。
審査の現状では、方針になる被爆距離や入市した日が超えた場合は、ほとんど機械的に却下されています。このため、事前に被爆状況の変更申請を出して原爆症の認定申請をする被爆者もみられます。
2 要医療性
申請する病気やケロイドなどが、申請時に「医学的管理が必要」な状態にあるか、治癒能力が放射線の影響を受けていることをいいます。すでに治癒した病気では、要医療性はないと判断されます。
要医療性の条件は、ページ下部「2.『要医療性』の要件」に整理しました。具体的には、申請する病気の治療や医学的管理が続いている場合のみとされています。
心筋梗塞や肝機能障害などは生涯治療が必要ですから、「要医療性」の要件は満たされていますが、がんの場合は冒頭に書いたとおりです。
さらに注意が必要なのは、放射線白内障は、手術だけが治療とされ、手術を予定していて手術前であることが条件とされていることです。
この2つの条件が認められたとき、申請した病気が原爆症と認定され、医療特別手当が支給されます。
「原爆症」と認定されると認定された病気の医療費は医療保険の給付を使わずに、全額国が負担し、医療特別手当が支給されます。このため申請の際には原爆症の「認定書」と「医療特別手当認定申請書」を一緒に出します。
東友会は、制度の詳しい説明と、申請者が記入する申請書類一式、医師に依頼する意見書などとお知らせ、記入見本などを用意して、希望する方に郵送しています。書類をチェックするなど申請のお手伝いもしていますので、お問い合わせください。
最近の認定審査には重大な問題が 要医療性の判断が厳しく被爆者に過重負担
最近、死亡の連絡があった被爆者の中に、申請すれば原爆症と認定される条件にあった人が多くみられます。
原爆症認定の「審査方針」は、2013年12月から変わっていませんが、厚労省の最近の審査に重大な問題が発生しています。
原爆症と認定されるのは「放射線起因性」と「要医療性」が求められますが、「起因性」について「審査方針」には、病名と被爆状況が具体的に示されています。しかし、「要医療性」については、「当該疾病の状況に基づき個別に判断する」としか書かれていません。
以前は、がんの手術をした場合は手術記録と切除した細胞の種類がわかる書類を添付して、主治医が「経過観察中」、「ホルモン療法中」、「化学療法中」などと書けば認定されていました。
しかし近年は、がんで申請する人の書類が大変に複雑になっています。化学療法を受けた場合は、その計画書、薬剤名、実施日、用法用量、実施されたことが確認される資料を、放射線治療の場合は、照射日、照射範囲、線量、処方箋や処方実施記録のコピーなどが求められます。
「意見書」や添付の書類で十分に確認できるがんが全身転移して治療が難しい人にも、治療しないという方針を決めたときのカルテのコピーを求めてきます。この照会の往復に1回3カ月から4カ月もかかるため、いま東友会で対応している3人の被爆者は、全員が、申請中に亡くなってしまいました
原爆症の認定と継続のための2つの要件
次の2つを満たすことが求められます。
- 「放射線起因性」は、その疾病の原因が原爆放射線によるものであると考えられること。
- 「要医療性」は、その疾病が現に医療を必要とする状態にあること。
1.「放射線起因性」の要件
被爆条件 | 指定病名 |
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2.「要医療性」の要件
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- 悪性腫瘍(固形がん:胃がん、肺がん、乳がん、大腸がんなど)
- 白血病(白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、骨髄腫など)
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手術、制がん剤、放射線療法やホルモン療法が終わった後、ほぼ5年以内。
乳がん、腎盂がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がんなどは、10年以内でも認定される場合があります。 -
- 副甲状腺機能亢進症
- 心筋梗塞
- 甲状腺機能低下症
- 慢性肝炎、肝硬変
- 定期的に医師の診断を受けて治療や経過観察を続けているあいだ。
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- 放射線白内障(加齢性白内障は除く)
- 手術を予定していて、手術前の場合。