原爆症認定集団訴訟 千葉地裁判決骨子および判決要旨
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判決理由骨子 (2008年10月14日、千葉地方裁判所)
- 原告朝比奈及び原告三瓶については、各原爆症認定申請却下処分が取り消されて申請疾病につき原爆症認定がされたかち、上記各処分の取消しを求める訴えの利益は消滅した。したがって、同原告らの訴えのうち、処分の取消しを求める部分は却下する。
- 原告朝比奈、原告高田及び原告三瓶は、申請疾病について放射線起因性及び要医療性の要件を満たすから、各原爆症認定申請却下処分は違法である。したがって、原告高田の請求のうち、処分の取消しを求める部分は理由がある。
原告田爪は、申請疾病の一部(陳旧性心筋梗塞及び脳梗塞後遺症)について放射線起因性及び要医療性の要件を満たすから、原爆症認定申請却下処分はその限度で違法であり、取消しを免れず、その余の申請疾病に係る部分は適法であるから、同部分についての処分取消請求は理由がない。 - 原告らに対する各原爆症認定申請却下処分に、国家賠償法1条1項にいう違法があるということはできないから、国家賠償請求はいずれも理由がない。
判決理由要旨 (2008年10月14日、千葉地方裁判所)
1 原告朝比奈及び原告三瓶の原爆症認定申請却下処分の取消しを求める訴えの利益
原告朝比奈及び原告三瓶については、平成20年5月21日に各原爆症認定申請却下処分が取り消されて申請疾病につき原爆症認定がされたから、上記各処分の取消しを求める訴えの利益は消滅した。したがって、上記各処分の取消しを求める訴えは、不適法であり、却下する。
2 放射線起因性の判断基準
「原爆症認定に関する審…査の方針」の採用するDS86に基づく被曝線量の推定及び原因確率に基づく放射線起因性の判断については、一応の合理性を肯定することができるものの、DS86及び原因確率のいずれにも一定の限界があり、これらを機械的に適用して放射線起因性を判断するのは相当ではない。
したがって、DS86によれば被曝線量が少ないと評価される被爆者や、「原爆症認定に関する審査の方針」によれば、原因確率が低いとされる被爆者又は原因確率が設定されていない疾病等を申請疾病等とする者であっても、その具体的な被爆状況、急性症状の有無、態様、程度及び経過、被爆後の行動及びその後の生活状況、申請に係る疾病等の症状及び発症に至る経緯、治療の内容及び治療後の状況、その他の病歴等を総合的、全体的に考慮した上で、放射線被曝による人体への影響に関する統計学的、疫学的、臨床的、医学的知見等を踏まえつつ、原爆放射線被曝の事実が上記疾病等の発生又は進行を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして検討すべきである。
3 各原告らの原爆症認定要件該当性
(1) 原告朝比奈は、膀胱がんについて放射線起因性及び要医療性の要件を満たすということができるから、原爆症認定申請却下処分は違法である。
(2) 原告高田は、血小板減少病、食道静脈瘤、肝硬変について放射線起因性及び要医療性の要件を満たすということができるから、原爆症認定申請却下処分は違法である。したがって、同処分を取り消す。
(3) 原告田爪は、腎機能障害及び腰部椎間板障害について放射線起因性の要件を満たすということはできないものの、陳旧性心筋梗塞及び脳梗塞後遺症について放射線起因性及び要医療性の要件を満たすということができる。したがって、原爆症認定申請却下処分は、陳旧性心筋梗塞及び脳梗塞後遺症に係る部分の限度で違法であるから、同部分を取り消す。
(4) 原告三瓶は、胃がんについて放射線起因性及び要医療性の要件を満たすということができるから、原爆症認定申請却下処分は違法である。
4 国家賠償請求の成否
原告らに対する原爆症認定申請却下処分(原告田爪については処分の一部)については、放射線起因性の要件を欠くものとした判断には誤りがあるが、厚生労働大臣が放射線起因性の要件を判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と却下処分をしたということはできない。また、上記各処分に行政手続法5条1項、7条、3条違反、条理上の作為義務違反があるということはできない。したがって、上記各処分に、国家賠償法1条1項にいう違法があるということはできないから、原告らの被告国に対する各損害賠償請求はいずれも理由がない。