原爆症認定審査の状況を読む 「新しい審査の方針」はいま?
2008年4月に各地の原爆症認定集団訴訟の勝利と世論に押された厚生労働省が原爆症認定審査の「新しい審査の方針」(新方針)を作り、審査を開始して半年が経とうとしています。
厚労省によれば、「新方針」では、申請書を事務局が3種類(自動認定、積極認定、総合審査)に区分し、「自動認定」は審査を省略して認定。「積極認定」に区分した申請は、医療分科会のなかの4つの審査部会のいずれかで審査され、「積極認定」の条件と申請疾患の「要医療性」が認められれば認定。認められない場合は医療分科会の「総合審査」で審査するとしています。
「新しい審査の方針」での「起因性」の判断
注:以下は、厚生労働省「新しい審査の方針」にもとづいて東友会が編集したものです。部分的な引用を行わないようお願いします。
- 自動認定
- 「原因確率」(これ自体は従来と変わらず)10%以上は、審査を省略して認定
- 積極認定
- 積極的に認定する範囲
- 爆心地から3.5キロ以内での直接被爆
- 原爆投下後100時間以内に爆心地から2キロ以内に入市
- 原爆投下100時間以後から2週間以内に爆心地から2キロ以内の地点に1週間以上滞在
- 指定病名
- 悪性腫瘍:固形ガンなど、白血病
- 副甲状腺機能亢進症
- 放射線白内障(加齢性白内障を除く)
- 放射線起因性が認められる心筋梗塞
- 総合審査
- 自動認定と積極認定どちらの対象にもならないものについては被曝線量、既往歴、環境因子、生活暦などを勘案して総合判断
2008年9月15日現在で、東友会が対応した被爆者のうち「新方針」の審査対象になっているのは230人。このうち厚労省の区分で「自動認定」と「積極認定」に入ると思われる人が163人います。現在68人に認定通知が届きました。病名で見ると心筋梗塞での認定が1人、他の67人はすべてガンなど悪性新生物でした。
「自動認定」「積極認定」のなかで審査中となっている95人の内訳は、悪性新生物76人、心筋梗塞12人、白内障7人です。このなかには2キロ以内で直接被爆した近距離被爆者35人が含まれています。
心筋梗塞で1人だけ認定されたのは原告で、長崎1.4キロ。しかし同じ心筋梗塞で長崎1.3キロの原告は認定されていません。白内障にいたっては認定はゼロ。申請から3年になる人もいます。「積極認定の範囲なのになぜ?」という声が強まっています。
厚労省からは執拗とも言える照会がつづいています。申請者が死亡したことを厚労省に報告した10カ月後と1年後に、大腸ガンのCTやMRI、腫瘍マーカーの報告書の提出などを求める照会が2回もあった事例、申請から3年近く放置した白内障の申請者に、すでに手術で摘出した角膜の検査を求めた事例など、東友会が対応しただけで、4月以降の問い合わせは30人以上にのぼっています。
滞留が数千件といわれている認定審査に対し、迅速な審査を求めるとともに、「積極認定」とされた心筋梗塞と白内障の認定を急ぐこと、添付書類の簡素化など改善を求める声が広がっています。
区分 | 申請件数 | 認定件数 | 残数 |
---|---|---|---|
自動認定 | 17 | 6 | 11 |
積極認定 | 146 | 62 | 84 |
(小計) | 163 | 68 | 95 |
総合審査 | 67 | 0 | 67 |
合計 | 230 | 68 | 162 |