原爆症認定で気をつけること 治療継続と医師との付き合い方
原爆症と認定され、「医療特別手当」(2025年度は毎月15万円程度)を受けている被爆者とその家族に知ってほしいのは、認定後も3年に一度、「要医療性」の審査(更新)が求められ、ここで認められないと「特別手当」(2025年度は毎月5万円程度)になることです。
「要医療性」とは、いままさに治療が必要な状態であるかどうかを指し、原爆症認定に必要な「放射線起因性」とともに、2つの要件のひとつとされています。
更新用の診断書を頼めない
「医療特別手当」を受けている被爆者に3年に一度、3月末に「健康状況届」の提出が求められます。これが「要医療性」の審査(更新)です。
「治療を受けていないので医師に診断書を頼めない」という相談が、毎年増えています。そのほとんどが、前立腺がんなど「尿路系」のがんで原爆症と認定された人です。ほかには、厚生労働省が治療終了後も10年間は「要医療性」を認めるとしている乳がん、甲状腺がんの人もいます。
実際の声として、「がんのホルモン治療をずっと続けてきたが、主治医が地方の病院に転勤した。とてもついて行けないので治療はやめた」、「介護が必要になって、往診してもらっているが、がんの薬は出していないと言われた」、「申請者の認知症がすすみ、治療を受けられなくなった」などがあります。
治療が継続できる条件を
主治医が移動する場合、病院は交代する医師を決めるのが一般的です。治療を受けた病院には、治療開始からのカルテがありますから、がんの経過はどうか、どんな薬が処方されているかを後任の医師は知ることができます。主治医から「移動する」と聞いたときは、必ず後任の医師を決めてもらうようお願いしましょう。
医師との信頼関係は大切ですが、主治医の移動先の遠くの病院に通えなくなるより、通いやすい近くの病院で後任の医師に診てもらうほうが、治療の継続という点ではいい場合があります。
「尿路系」のがんは前立腺のほかに腎盂、尿管、膀胱がんなどが含まれます。乳がん、甲状腺がんも含めたこれらのがんについては、手術、ホルモン療法などの治療が終わった後、つまり「治癒した」後も経過観察を続けていれば、10年間、「医療特別手当」が継続されています。
家族・親族に知ってもらう
もうひとつ注意してほしいことがあります。「医療特別手当」を受けている被爆者は、必ず親族などに「医療特別手当」を受けていること、東友会が手伝ってくれたことを知らせてください。3年ごとの更新なので、この期間に認知症のため施設に入った人が多くなっています。親族が「医療特別手当」受給のことを知らずにいて、5年以上も手当の振り込みが止まっている人もいます。東友会は親族に説明して手当が継続できるようお手伝いしています。
白内障で原爆症認定を申請する場合の留意点
2025年8月号の「相談のひろば」で白内障の原爆症認定申請についてお知らせし、被爆距離が1.5キロ以内で直接被爆した人の場合は、「医療特別手当」が申請できることを紹介しました。この記事を読んで、原爆症の認定申請を出したいとの相談がいくつかありましたが、医師の判断では症状が軽度で、まだ手術の必要はない人がほとんどでした。
白内障は現在、手術だけが治療とされ、原爆症認定申請の場合は、手術前で手術の日程が決まっていることが求められています。ここにも「要医療性」の条件がありますので、ご注意ください。