東数男原爆裁判 第14回口頭弁論
沢田名誉教授が証言、DS86の欠陥きびしく指摘
肝機能障害(C型)で原爆症認定を求めている東数男 さんの第14回口頭弁論が2002年3月15日、東京地裁103号法廷でおこなわれ、東友会の71人をはじめ首都圏の被爆者、民医連、原水協代表、支援する会など131人が傍聴しました。
この日は、名古屋大学の沢田昭二名誉教授が、国・厚生労働省側の被爆線量評価は事実に反しており、これをもとに原爆症認定をおこなうことは誤りであることについて証言しました
沢田証人はあらかじめ裁判所に意見書を提出していました。主尋問に立った鈴木弘美弁護士から「なぜこれを書いたか」と質問され、「自分も広島の被爆者であるが、今の核兵器は広島型原爆の1000倍もの破壊力を持っている。核の恐ろしさを訴えなくてはならないとの思いで書いた」とのぺました。
物理学者 沢田氏の証言(要旨)
鈴木弘美弁護士 原爆の威力を物理学的に説明してほしい。
沢田昭二証人 長崎の破壊力を高性能爆弾に換算すると22.5キロトンを一気に爆発させたことになる。
鈴木 原爆は火薬とは違う効果があるのでは。
沢田 放射線を出す。熱線、衝撃波、爆風も桁違いだ。
鈴木 ピカドンとよく言われるが、ピカは熱線、ドンは衝撃波か。
沢田 原爆爆発の表面温度は5000度から7000度。太陽の表面温度は6000度。長崎は500メートル上空で爆発しているので地上では人間は黒こげになる。皮膚が破壊されてはがれてしまうので、皮膚がたれて幽霊のようになる。
鈴木 衝撃波は。
沢田 1平方メートルあたり7トンの圧力。構造物はぺちゃんこに。風速は秒速100メートル。日本で最大の伊勢湾台風でも60メートルだった。
鈴木 放射線は。
沢田 放射線には初期放射線としてガンマ線、中性子線があり、残留放射線、放射性降下物がある。
鈴木 DS86では、それは反映されているのか。
沢田 残留放射線や放射線降下物は被爆後の台風などで流された。その後の測定値をもとにしたDS86には実態が反映されていない。
裁判長 DS86のデータはだれが計算したのか。
沢田 アメリカエネルギー省。原爆の構造は秘密だから、私たちにはできない。
竹内英一郎弁護士 DS86はガンマ線量と中性子線量を足し算していると指摘しているが、なぜそうしているかと思うか。
沢田 理解できない。認定を難しくすることつながるが、真意は分からない。
竹内 黒いすすがあったことは間違いないか。
沢田 ネパダの乾いた実験場でも、すすがあった。
竹内 黒いすすは、人体にどう影響するか。
沢田 呼吸で肺に、川の水を飲んで体内に入る。
竹内 体内被爆線量は測定できるか。
沢田 直後ならできたが、今ではできない。
(国側の反対尋問は省略)
報告集会
弁論後、弁護士会館で説明集会があり、弁護団は「中学生のレペルで証言してほしいとお願いした」と裏話を披露。沢田名誉教授は、「物理の分野では、国は証人を立てることはできないだろう」とのぺ、傍聴者に確信を与えました。
署名提出
口頭弁論に先立って、「原爆裁判の勝利をめざす東京の会」は、3月15日午前、「東数男さんの被爆の実相に即して公正裁判を求める署名」6034人分を東京地方裁判所に提出しました。 これで累計は5万5192人分となりました。目標は10万です。