東数男原爆裁判 第13回口頭弁論
齋藤医師が感動の証言「人体被害のひどさに胸うたれた」
東原爆裁判の第13回口頭弁論が2001年12月20日、東京地裁103号法廷で開かれ130人が2交替で傍聴しました。この日は、広島・福島生協病院の齋藤紀院長への証人調べが、原告・被告双方からおこなわれました。
齋藤証人は事前に、「意見書」を裁判所に提出していました。弁護団から、「意見書をなぜ書いたのか」と聞かれて、「国側から間違った見解、被爆者の実情と乖離した意見が出されているので」と、静かな口調ながら怒りを込めて証言しました。
東さんは被爆後、大村海軍病院に入院中をふくめ10年間にわたり、占領軍やABCCの診察を受け、その診断記録が証拠として提出されています。これを見たときの感想を聞かれて、齋藤医師は、「個人の人体傷害の記録を初めてみて、被害の深刻さに驚き、胸うたれる思いで分析した」と証言。「細菌感染への抵抗力は落ちていた」と、放射線によって身体の機能が危機的に低下していたことを明快に証言しました。
続いておこなわれた国側の反対尋問は、放射線被害を否定しようとする幼稚な質問ばかりで、放射線被害の深刻さを逆に引き出す結果となり、傍聴席から失笑がもれ、「何もわかっていない」「もっと勉強してほしい」という声が出ていました。
齋藤医師の意見書要旨 国の資料使って肝障害を解明
12月20日東原爆裁判第13回口頭弁論を前に、齋藤紀医師が東京地裁に提出した意見書の要旨はつぎのとおりです。
被爆2カ月後から10年間の占領軍やABCCによる数回の調査で、東さんが、出血、血性下痢、脱毛など放射線急性障害の中心的な症状を複数、重複して発症していたこと、放射線で骨髄が障害され白血球が異常に減り、明らかに感染しやすい状態にあったことが判明している。
このデータから東さんの生存が、きわめてきびしい状況にあったことは明白である。この高線量被爆は、染色体に永続的な傷害を残すことが多い。
国は「10グレイ」以上の被曝量を受けないと肝臓には障害がでない、としているが、これはラットの肝臓にだけ放射線をあて、他の臓器は被曝させない実験からえたデータであり、この基準を全身に被曝した被爆者に使うのは不適切である。
被爆2,3カ月後の長崎市がおこなった肝臓検査では、急性障害のあった被爆者の47%に障害があった。被曝した人のうち半数以上が1,2カ月以内に死亡する「半致死量」が4グレイとされていることからみて、この被爆者の被曝線量は10グレイ以下であったと思われる。
国は放射線影響研究所など論文を使って、日本では慢性肝障害の80%がC型などウイルスによるから、被曝に無関係だと主張している。しかし、国の出したこの論文では、C型肝炎ウイルスが被曝線量と関係して被爆者に慢性肝疾患を起こしたか否かについては証明されていない。
報告集会
裁判終了後、弁護士会館会議室で報告集会が開かれました。原告の東数男さんも夫妻で参席。
齋藤医師は、「裁判官に理解してもらうためにどうやさしく話をするかを考えて夜も眠れなかった」と秘話を披露。傍聴者からは、「難しい内容だったが分かりやすかった」とお礼の感想がだされました。
署名提出
「原爆裁判の勝利をめざす東京の会」は、証人調べに先立って、12月20日午前、「東数男さんの被爆の実相に即して公正裁判を求める署名」1万8,624人分を東京地方裁判所に提出しました。これで累計は4万9,158人分となりました。目標は10万です。