東数男原爆裁判
厚生労働省の不当控訴に対する声明
東数男原爆裁判の厚生労働省による不当控訴に対し、東友会は日本被団協・東京おりづるネット(原爆裁判の勝利をめざす東京の会)・東さんの弁護団と連名で以下の声明を発表しました。
東原爆裁判の不当控訴に対する抗議声明
控訴審での早期解決と、集団訴訟の完全勝利を勝ち取ろう
厚生労働大臣は、本日、東京地方裁判所民事第2部が3月31日に言い渡した東数男さんの原爆症認定訴訟の判決を不服として、控訴を申し立てました。東さんは重い肝機能障害に侵されているばかりか、肺がんも患っており、75歳の高齢を迎えて、控訴審に耐えられるか心配される状況にあります。その東さんが必死で求めていた大臣面会を拒否してのこのたびの暴挙であり、厚労省が被爆者の生命・健康を軽視する姿勢を示すものとして強く抗議します。
東さんは、16歳の時に勤労動員で働いていた長崎の三菱重工長崎兵器製作所で被爆し、被爆直後から、発熱、脱毛、血性の下痢、嘔吐などの急性症状に見舞われ、その後も倦怠感や食欲不振、体調不良に苦しみ続けました。
その東さんが、平成6年に肝機能障害を理由に求めた原爆症認定が却下されたため、平成11年に提訴し、申請から10年目に得た勝訴判決でした。東京地裁の判決の内容は、「原子爆弾による被害は未曾有のものであり、他に例を見ない凄惨なものであった」と被曝の実相を直視し、放射線被害の人体への影響については、「多くの被爆者は、莫大な量の初期放射線を全身に被曝したことに加え、残留放射能を被曝しており、その後も放射線による後障害の不安を抱き続けるという、極めて特異かつ苛酷な状況に置かれているものである」と、被爆者の立場を理解しました。
そして、C型肝炎である東さんについて、「原爆放射線に被曝したことが、HCVの感染とともに慢性肝炎を発症又は進行させるに至った起因と認めるのが相当である」として、厚労省の却下処分を取り消しました。
東さんに続いて、現在、全国10地方裁判所で140名近い被爆者が、さまざまな病気を抱えながら、集団訴訟を提起して闘っています。厚労省がこれまでと同じような被爆者行政を続けるならば、原告になる被爆者は後を絶たず、高齢化に伴って急激に増加することも予想されます。
私たちは、厚生労働省が被爆者切り捨ての行政を抜本的に改め、28万人の被爆者が十分な医療と安心した生活ができるよう、松谷最高裁判決で敗訴したあと導入した「原因確率」という、非科学的で非人道的な認定基準を直ちに廃止することを求めます。
被爆から58年、被爆者はいまなお原爆による肉体的・精神的・経済的なさまざまな被害を蒙っていますが、被爆者の願いは自分たちのような苦しみが最後にしたい、そのために核兵器の廃絶を実現することにあります。
市民の皆さんには、東さんの控訴審での解決が早期に実現するように、そして被爆者の願いを実現するために、力を貸していただくようお願いします。
2004年4月12日
- 日本原水爆被害者団体協議会
- 東京都原爆被害者団体協議会
- 東数男原爆訴訟弁護団
- 原爆裁判の勝利をめざす東京の会