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あずま数男かずお原爆裁判 東京高裁でも勝訴!

 あずま数男原爆裁判の完全勝訴をうけ、東友会は日本被団協・東京おりづるネット・あずまさんの弁護団と連名で以下の声明を発表しました。

あずま原爆裁判、東京高裁でも全面勝訴
集団訴訟の全面解決と新たな認定基準の導入を

 本日、東京高等裁判所第19民事部(岩井俊裁判長、及川憲夫、竹田光弘裁判官)は、厚生労働大臣が控訴したあずま原爆裁判に対し、1審判決どおり被爆者である東数男(あずま・かずお)さんが罹患したC型肝炎による肝機能障害を原爆症と認定する判決を言い渡しました。

 あずまさんは、16歳のときに学徒動員で働いていた長崎の三菱重工業長崎兵器製作所大橋工場で被爆し、被爆直後から、発熱、脱毛、血性の下痢、嘔吐などの急性症状に襲われ、その後も倦怠感や食欲不振、体調不良に苦しみ続けました。
 そのあずまさんが、1994年に肝機能障害を理由に求めた原爆症認定申請が却下されたため、1999年に提訴し、1審東京地裁で昨年3月に勝訴しました。ところが理不尽にも厚生労働大臣が控訴したのに対して、東京高裁は以下のような理由をあげて、これを退けました。
 「肝機能障害が放射線起因性を有するか否かを判断するに当たって、原爆放射線を被曝したことによって上記疾病が発生するに至った医学的、病理学的機序の証明の有無を直接検討するのではなく、放射線被曝による人体への影響に関する統計的、疫学的な知見を踏まえつつ、被爆状況、被爆後の行動やその後の生活状況、具体的症状や発症に至る経緯、健康診断や検診の結果等を全体的、総合的に考慮した上で、原爆放射線被曝の事実が上記疾病の発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性が認められるか否かを検討することが相当である。」

 この判決内容は、人類が初めて経験した「生き地獄」としかいいようのない被爆の実相を踏まえ、放射線が人体に与える影響について、現在の科学的な知見を正しく理解した上での判断であり、極めて正当なものと評価されます。
 ところがあずまさんは、控訴が原因となって、病状が急速に悪化し、ついに本年1月29日に逝去され、この判決を聞くことができませんでした。あずまさんの無念さと悔しさを思うと、勝訴判決も率直に喜ぶことができないことが残念でなりません。そして私たちは、原爆症の身体を抱えながら却下処分から10年間、まさに必死の闘いをあずまさんに強いた厚生労働大臣の非人間的な被爆者行政と応訴態度に対して、改めて深い憤りと怒りを禁じ得ません。
 厚生労働大臣は、今こそあずまさんに対し心から詫びるとともに、本日の東京高裁の判決を直ちに受入れ、上告をしないことで、せめてもの償いをしていただきたい。

 60年前、広島・長崎に投下された原爆によって、年内だけでも21万人が殺され、その後も多くの被爆者が殺され続けてきました。このようななかで、今、かろうじて生き残っている全国27万人の被爆者は、原爆症の発症といつ訪れるかも知れない原爆死に怯え、さまざまな疾病に苦しめられています。
 この現実を直視し、厚生労働省が、本日の東京高裁の判決を踏まえて、認定制度を抜本的に変えるとともに、全面的な解決をするよう強く求めます。
 私たちは、故人の遺志に従って、原爆症認定制度を抜本的に改め、核のない世界を実現するために、現在、全国13の地方裁判所で168人の被爆者が集団で行なっている原爆症認定訴訟の原告らとも力を合わせ、最後まで闘い抜くことを決意します。市民の皆さんの大きなご支援とご協力を切望いたします。

2005年3月29日

  • 日本原水爆被害者団体協議会
  • 東京都原爆被害者団体協議会(東友会)
  • あずま数男かずお原爆訴訟弁護団
  • 東京おりづるネット(原爆裁判の勝利をめざす東京の会)
東京高裁前で
高裁判決直後、「完全勝利」の垂れ幕を掲げる弁護士たちと、「厚生労働省は上告するな!」のメッセージを掲げる被爆者・支援者ら